リバースモーゲージとは?仕組みやメリット・注意点をわかりやすく解説

老後の生活や将来の資産形成に不安を抱いている方は少なくありません。そこで、住宅所有者がまとまった資金を調達する方法として注目されているのが「リバースモーゲージ」です。

これは不動産を担保にして得られるローンの一種で、主に50代以上の方が利用できるようになっています。

この記事では「リバースモーゲージ」とは何なのか、その仕組みや利点について解説。老後の資産形成や生活の安定に向けてどのように役立つのか、どのような点に注意すべきなのかわかりやすくお伝えしていきます。

目次

リバースモーゲージとは?どういう仕組み?

リバースモーゲージとは

リバースモーゲージとは、自宅に住み続けながら、その家を担保にして資金を借入れできる融資制度のことです。

住宅を担保にする点は一般的な住宅ローンと変わりませんが、返済方法が異なります。

住宅ローンは自宅を担保に一括でまとまった融資を受けて月々「元本+利息」の返済をしていくのに対し、リバースモーゲージは定期的あるいは一括で融資を受け、月々利息分のみ返済していく(生存中の返済は不要としているケースもある)仕組みです。

元本については、契約者が亡くなった際に対象の住宅を売却するか、相続人が返済する方法で一括返済します。

この制度を扱っているのは、銀行や信託銀行、信用金といった一部の金融機関と、各自治体の福祉協議会など。利用できる年齢、貸付限度額、資金の使い道などの条件は扱っている機関によって変わるため、内容が自分に合っているか十分に確認したうえで契約しましょう。

「リバースモーゲージ」の種類

リバースモーゲージと混同されがちな制度として、金融機関が提供しているリバースモーゲージ型住宅ローンがあります。

名称取扱機関概要
リバースモーゲージ・地方自治体の社会福祉協議会
・一部の金融機関
・医療・介護資金、趣味・旅行資金、生活資金など、使途が自由(事業資金・投資資金としては使えない)。
・全国どこでも利用できる。
リバースモーゲージ型住宅ローン・一部の金融機関・住宅金融支援機構と金融機関が協力して提供している(「リ・バース60」)。
・資金使途は住宅関連に限られ、生活資金に充てることはできない。
・利用対象になるのは首都圏などの大都市圏が中心で、地方エリアはやや難しい傾向がある。

以下では、自治体が運営するリバースモーゲージの特徴と、一部の金融機関が商品として扱っているリバースモーゲージ型住宅ローンについて見ていきましょう。

自治体が運営するリバースモーゲージの特徴

まず、自治体が運営しているリバースモーゲージと、一部の金融機関が扱っているリバースモーゲージは利用条件やターゲット層が異なっています。

地方自治体の福祉協議会が窓口となって取り扱っているリバースモーゲージは【不動産担保型生活資金】と呼ばれ、主に低所得者層で生活資金に困窮している世帯の支援目的で設けられています。

公的なリバースモーゲージの利用条件は自治体によって変わってきますが、土地の担保価値が1,500万円以上の自宅を保有しており、低所得者(住民税非課税世帯)であることと65歳以上であることが基本的な条件です。

生活資金の支援が主な目的なので、資金の使い道は住宅の修繕が必要な場合を除いて生活資金に限られています。

・公的リバースモーゲージ【不動産担保型生活資金】の貸付限度額は、土地の評価額の約70%程度。

リバースモーゲージ型住宅ローンとは

リバースモーゲージ型住宅ローンは、住宅金融支援機構の住宅融資保険【リ・バース60】を活用して各金融機関が提供している住宅ローンを指します。

申し込みできるのは基本的に60歳以上ですが、金融機関によっては50歳以上に設定しているところもあります。

資金の使い道は、住宅の建設・修繕・リフォームや高齢者向け住宅へ入居するための一時金など住宅関連に限られ、原則として生活資金には使えません。

契約者本人が亡くなった際の返済方法には「リコース型」「ノンリコース型」の2種類を用意している金融機関があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。

返済タイプメリットデメリット
リコース型・金利が低めで、月々の返済負担が軽くなる。・残債を相続人が負担する必要がある。
ノンリコース型・担保物件を売却後に残債があっても、相続人に返済請求が及ぶことはない。・金利が高めで、生存中の利息返済負担はリコース型よりも大きくなる。

住宅金融支援機構のデータによると、2022年度は申込者の約99%がノンリコース型を選択しているそうです。

・借入限度額は、担保評価額の約50~60%。
・投資用物件の購入資金としての使用は不可。

リバースモーゲージのメリット

リバースモーゲージのメリット
リバースモーゲージのメリット
  • 高齢でも融資が受けられる
  • 毎月の返済は利息分だけ
  • 「ノンリコース型」なら相続人に返済義務は残らない

それぞれ詳しく確認していきましょう。

高齢でも利用できる

リバースモーゲージはもともと60代以上のシニア層向けに用意されているローンの種類なので、上限がゆるく、完済年齢を設定していないケースがほとんどです。

定年退職後に住宅ローンの支払いが残っていて生活を圧迫するようであれば、リバースモーゲージへの切り替えを検討してみるのもひとつの方法でしょう。

自宅(土地)を手放すことなく、老後資金を確保できる点は大きなメリットといえます。

毎月の返済は利息分だけ

通常の住宅ローンは元本と利息を併せて返済しますが、リバースモーゲージの支払いは利息分のみです。

毎月の返済負担が少ないため、生活費をやりくりして自由に使えるお金を確保しやすくなる点もメリットといえるでしょう。

なお、契約タイプによっては生存中に利息の支払いも行わず、契約終了時(債務者が亡くなった日)にまとめて返済するタイプもあります。

「ノンリコース型」なら相続人に返済義務が残らない

自分が住宅を担保に借入することで子供に迷惑がかかるのではないかと心配になる方もいるでしょう。

しかし、ノンリコース型のリバースモーゲージを利用すれば、相続人に負担が生じることはありません。

基本的に契約者本人が亡くなった後は担保にしている不動産の売却により元金を 一括返済しますが、相続人が契約を引き継いで住み続けることができるプランも増えてきています。

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リバースモーゲージのデメリット

リバースモーゲージのデメリット

「リバースモーゲージはやばい」「悲惨」などの声も多く聞かれます。その理由は何なのか、ここではデメリット・注意点について見ていきましょう。

リバースモーゲージのデメリット
  • 推定相続人の同意が必要
  • マンションは対象外になりがち
  • 資金の使い道が限定されていることが多い
  • 金利の上昇で担保割れになるリスクがある
  • 「不動産評価額<融資額」になり、差額の返済を求められる可能性がある

推定相続人の同意が必要

リバースモーゲージを利用する際は、基本的に相続人の同意が必要になります。

その理由は、債務者が亡くなった後にローンを返済する方法として、自宅の売却を前提としているため。自宅を売却したお金を返済金に充てるため、相続人は自宅を引き継ぐことはできません。

また、不動産評価額の下落などにより売却価格が債務価格を下回った場合、相続人に残債の一括返済義務が生じます(リコース型のリバースモーゲージを契約している場合)。

残債の対応については、リコース型(相続人が一括返済する)とノンリコース型(相続人の返済不要)があるため、契約書に同意する際はどちらのタイプか必ず確認したうえで判断しましょう。

推定相続人とは・・・現在の状況で相続が発生した場合、法定相続人になるであろうと推測される人を指す言葉。

マンションは対象外となる場合が多い

リバースモーゲージは、担保にできる対象物件を一戸建てに限定し、マンションは対象外としている金融機関が多いです。

その理由は、リバースモーゲージの場合、基本的に建築物が建っている『土地』を評価するため。

建物は経年による老朽化などで資産価値が低くなっていきますが、土地は長年住んでも資産価値は維持されやすいです。

そのため、居住しているマンション(建物)の評価額が高くても、リバースモーゲージとしての評価としては低くなる傾向にあるのです。

ただし、「築年数が浅い(20年以下)」「駅からの距離が近い」「首都圏など人口が多い場所にある」などの条件を満たしている場合は、対象物件として認められるケースもあるようです。

資金の使い道が限定されている

利用する金融機関によっては、資金の使い道を限定している場合もあります。

そもそも老後資金を賄うことが目的のローンになるので、事業資金や投資資金としての使用は原則NGにしている金融機関が多いです。

なお、リバースモーゲージ型住宅ローンの場合は既存の住宅ローンの借りかえ資金や住宅のリフォーム資金等、住宅関連のみに限定されていて生活資金には使えないことが一般的です。

返済期間中に金利上昇のリスクがある

変動金利型のリバースモーゲージを利用している場合は、金利が上昇すると月々の返済額が増えるというデメリットがあります。

毎月の支出額が増えることは生活費に直結する問題なので、そのリスクを考慮したうえで契約するか判断しましょう。

契約期間中に金利が上昇すると、借入残高が増えて担保割れになりリスクがある点も理解しておくことが大切です。担保割れになると、差額分の一括返済を求められるケースがほとんどです。

担保割れとは・・・不動産の担保評価額が、借り入れしたローンの残高より少なくなってしまう状態のこと。

不動産評価額が下落するリスクがある

リバースモーゲージの融資額は、自宅の不動産評価額に応じて決定します。

不動産の評価額は定期的(年に1回程度)見直されるため、自宅の不動産評価が下がった場合は融資限度額も下がることになります。

このとき、すでに融資を受けている金額が不動産評価額を上回ってしまうと差額が生じますよね(担保割れ)。差額分は金融機関から一括返済を求められることが多いので、不動産を担保に融資を受けるリバースモーゲージのデメリットといえるでしょう。

また、債務者が亡くなって担保にした不動産を売却して一括返済する際、担保物件の不動産価格が借入額より少ないと相続人が不足分の返済を負担する必要があります(リコース型の場合)。

リバースモーゲージ以外で資金を調達する方法

リバースモーゲージと同様に、所有している不動産を活用し資金を得る方法としてリースバックが挙げられます。

リースバックとは、自宅を売却して代金を受け取りつつ、リースバック事業者へ家賃を支払うことで売却後も住み続けることができる手法です。

ローンではないため銀行の審査などもなく、利用できる年齢も制限されていません。売却で得た資金の使途も原則自由なので、リバースモーゲージよりも利用しやすいといえるでしょう。

リバースモーゲージとリースバックを比較

比較項目リバースモーゲージリースバック
仕組み自宅を担保にお金を借入れし、死亡後もしくは契約期間満了後に自宅を売却して一括返済する方法自宅を売却して現金を受け取り、リース契約(賃貸借契約)をして売却後も自宅に住み続ける方法
対象物件戸建てに限定されることが多い不動産全般
年齢制限50歳以上
※利用する金融機関によって異なる
特になし
毎月の支払い利息
※生存中は利息の支払いも不要としている場合もある
家賃
所有権自分のまま
※売却時まで
不動産を購入した業者
資金の使用用途制限される自由
保証人必要不要

リバースモーゲージとリースバックの最も大きな違いは、「売却」か「融資」かという点です。

どちらにもメリット・デメリットがあるので、よく比較検討したうえでご自分に合った方法を選びましょう。

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リバースモーゲージに向いている人とは

リバースモーゲージは、主に以下のような方に向いているといえます。

リバースモーゲージの利用が向いている人
  • 自宅を残す必要がない
  • 住宅ローンの返済が残っている
  • セカンドライフを充実させたい
  • 将来施設への入居を考えている

自宅を残す必要がない人

相続する人がいなかったり自宅を残す必要がなかったりする方にはリバースモーゲージの利用が向いているといえるでしょう。

ただし、リバースモーゲージは最終的に自宅などを売却して一括返済する仕組みなので、もし子供と同居している場合は債務者の死亡後に住む場所を失うリスクがあります。

相続トラブルにもなりかねないので、リバースモーゲージを利用する前に必ず同意を得ておいてください。

住宅ローンの返済が残っている人

定年後も住宅ローンの返済が残っている場合は、リバースモーゲージによる借り換えが有効な手段といえます。

年金生活で住宅ローンの返済をしていくことは大きな負担になってしまいますが、リバースモーゲージを利用すれば生存中の返済は利息分のみです。支出を抑えることで、趣味や習い事などやりたいことを楽しむ余裕も生まれることでしょう。

セカンドライフを充実させたい人

利用する金融機関にもよりますが、リバースモーゲージで自宅を担保に得た資金は多目的に利用できます。

年金の不足分を補えるのはもちろん、旅行などのレジャー資金や、病気や要介護になった時の備えとして貯めておくなど、セカンドライフをより充実させたいと考えている方にもリバースモーゲージは利用価値があるといえます。

将来的には老人ホームなどで暮らそうと考えている人

現在は自宅で1人暮しをしていて、将来的には世話をしてくれる人がいる老人ホームなどに入居しようと考える方にもリバースモーゲージは向いています。なぜなら、まとまった資金を入居費用の一時金に充てることができるため。

一般的に、老人ホームへの入居費用は高いといわれています。「ゆくゆくは老人ホームへの入居を考えている」「生存中は自宅を残しておきたい」という場合は、リバースモーゲージの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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リバースモーゲージはシニア向けの資金調達方法の一つ

老後2,000万円問題など、老後の資産形成について多くの問題が浮上しているなかで、リバースモーゲージは資金不足をカバーする有益な方法として注目を集めています。

もちろん、自宅を活用した資金の調達方法は他にもありますので、リバースモーゲージに限定せず選択肢のひとつとして、他の方法も比較してみましょう。

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