「リースバックとは?」
「リースバックの仕組みは?」
リースバックに対して疑問を持っている方も多いかと思います。
リースバックとは、第三者に所有している物件を売却し、同時に賃貸契約を結び、住み続ける取引のことです。
この記事では、リースバックの仕組みやメリットデメリットなどについて紹介していきます。
リースバックとは
リースバックとは、保有している自宅を売却すると同時に、賃貸借契約を締結して売却後も住み続けるという仕組みを指します。
不動産会社やファイナンス会社が実施しているサービスで、主に住宅ローンの返済で困っている方や、自宅を現金化したい方が利用しています。
ほかにも、このサービスは以下のような悩みを持っている方におすすめです。
- まとまった資金が必要
- 売却したことを周囲に知られたくない
- 住宅ローンの返済が苦しい
- 相続対策をしておきたい
リースバックを利用すれば短期間でまとまった資金を得られるメリットがある一方、大きな資産運用になるので「売却額は妥当な金額か」「賃貸借の契約期間は問題ないか」など慎重に検討しましょう。
リースバックを実際に使用した例
リースバックを実際に使用した例について紹介します。
利用を検討している方は、是非参考にしてください。
- 1、名古屋市/2020年築/60代男性/アパート経営
-
リースバック査定額:3,300万円
リースバック賃料:15万円男性一人暮らし。
当該物件が出来た直後に父が亡くなり、相続。
亡くなった父が不動産を多数所有していて現在も父から相続したアパート収入が月50万円ある。
国税局より相続税の追徴課税が3,000万円きたので3,000万円手元に残るように査定希望。
代金4,500万円、賃料17万円で報告するも売主の希望で左記金額で契約。 - 2、知多市/1978年築/70代男性/自営業
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リースバック査定料:850万円
リースバック賃料:6.8万円ネットショップを自営しており事業拡大の為、リースバック希望。
名義人は10年前に亡くなった母で、相続人は問合せ者以外に姉と妹がいるが、10年以上連絡を取っていない。
増築による未登記建物、相続登記をしないと売れないことを説明し、兄弟に連絡を取るよう依頼するも連絡先がわからない。
弁護士に依頼し、戸籍謄本等から連絡の取れない姉と妹の連絡先を調べ上げ、売買の説明と登記の為の協力を依頼。
受注発注でネットショップを販売しているが注文がきても払えないのでストップしている。
姉と妹と連絡が取れるのに3か月かかり、その間銀行融資を5行相談したが断られた。
左記金額で契約。
リースバックのメリット
売却したあとも家賃を払って住み続けることができるリースバックには、ほかにもさまざまなメリットがあります。
- 売却後も住み続けることができる
- 売却したことを周囲に知られずに済む
- 短期間でまとまった資金を得られる
- 自宅の維持管理コスト・リスクが軽減される
- 住宅ローンの早期完済が可能になる
- 将来的に買い戻し(再購入)できる
売却後も住み続けることができる
売却後も住み続けることができる点は、リースバック最大のメリットともいえるでしょう。
通常、自宅を売却したあとは所有権が第三者へ渡るため新居を探して明け渡す必要があります。しかし、リースバックの場合はそのまま住み続けられるので、引越しなどの手間や費用がかかりません。
また、生活環境が変わらず、通勤・通学への影響が出ないこともメリットといえます。
売却したことを周囲に知られずに済む
自宅を売却したことが近隣住民に知られる心配がない点も、リースバックのメリットです。
なぜ周囲へ知られずに済むのかというと、売却した自宅の所有権を持つ業者が売却情報・賃貸情報を公開することがないため。
たとえば、不動産会社が不動産を購入した場合、通常は新たな買い手を探すために不動産ポータルサイトや広告などで売却情報を公開します。
一方で、リースバックは売却主が住み続けることを前提としているので、わざわざ周囲に情報を公開する必要がないのです。そのため、近隣住民に自宅を売却したことは知られずに済みます。
短期間でまとまった資金を得られる
一般的な不動産売却では、買い手の募集から契約手続きなどに時間がかかります(目安は3ヵ月~半年程度といわれています)。場合によっては、売却希望の時期までに契約が決まらないかもしれません。
しかし、リースバックは不動産会社などの業者が一括現金で買い取るので、まとまった資金を早く調達したいのであれば通常の不動産売却よりも有利といえます。
リースバックなら資金の使い道が自由
リースバックで得られる資金は使用用途が制限されないので、資金が自由に使えます。
老後資金として使用できるのはもちろん、生活資金や事業資金など幅広く活用することが可能です。
借金をせずに自由に使える資金を得られるのは大きなメリットといえるでしょう。
自宅の維持管理コスト・リスクが軽減される
リースバックで自宅を売却することによって、固定資産税や都市計画税、修繕費(契約内容によっては自己負担)などの維持管理費を負担する必要がなくなります。
ただし、賃貸借契約を締結して住む際は家賃のほか火災保険や家賃保証料といった費用がかかるので、契約時によく確認しておきましょう。
住宅ローンの早期完済が可能になる
住宅ローンの返済期間は、基本的に30~35年と長期に渡ります。返済期間中、収入が減ったり、事故・病気などで失業してしまう可能性はゼロではありませんよね。
このような場合、リースバックを利用して自宅を売却すればローン返済の不安を解消できます。
将来的に買い戻し(再購入)できる
将来的に買い戻しを希望する可能性がある場合は、一定の条件のもとで売却した自宅を買い戻せる「買戻し特約」を付けられるケースもあります。
買戻し特約とは、決められた期間内に契約時に定めた金額を支払うことで自宅を買い戻せるという内容です。こちらは契約によりますが、家賃を滞納するなどの契約違反があると、買戻し特約が消失してしまうので注意が必要です。
リースバックのデメリット
リースバックには、メリットだけでなくいくつかのデメリットもあります。
- 家賃の支払いをしなくてはいけない
- 売却価格が相場より安くなる傾向にある
- いつまでも住めるとは限らない
家賃の支払いをしなくてはいけない
リースバックを利用して売却後も住み続ける場合には、毎月家賃の支払いをしなければいけません。
家賃は立地や築年数によって異なりますが、売却価格を基準に、地域の家賃相場から期待利回りを算出して決定するのが一般的です。
リースバックで資金を得られても、毎月の家賃が高くなってしまうと家計を圧迫してしまう可能性があるため慎重に交渉していきましょう。
売却価格が相場より安くなる傾向にある
リースバックで不動産売却をする場合、通常の相場よりも売却価格が安くなる傾向にあります。
なぜかというと、リースバックで不動産を買い取る業者は最終的な利回り(利益)を重視するためです。購入費用を相場より安く抑えることができれば、その分運用で利益を出しやすくなりますよね。
なお、売却価格が高額になる場合は家賃も高額になることが想定されます。「とにかく高く売れれば良い」と単純に考えるのではなく、売却後の家賃も考慮していきましょう。
いつまでも住めるとは限らない
通常の賃貸物件にも共通しますが、売却した自宅はいつまでも住めるとは限らないので注意が必要です。
基本的に、リースバックは1~2年間の契約期間が設定される「定期借家契約」になるケースが多いです。
定期借家契約では、契約更新時に貸主の合意が得られなければ契約終了となります。
できるだけ長く住み続けたい場合は、契約期間の定めのない「普通借家契約」を締結するか、定期借家契約の期間を長く設定してもらえるよう交渉してみると良いでしょう。
リースバックを検討するタイミング
では、どのようなときにリースバックを検討すべきなのでしょうか。
- 老後資金を用意したいとき
- 住宅ローンを返済したいとき
- 相続資産を整理したいとき
- 住み替えをしたいとき
ここでは、具体例と合わせて確認していきましょう。
老後資金を用意したいとき
一般的に、住宅ローンは30年や35年という長期間の返済が求められます。
家を購入した際には返済の目処が立っていたとしても、何らかの事情で収入が減り、返済が厳しくなる可能性もあるでしょう。
「自宅はあるものの、老後の生活費に不安がある」「病気で医療費がかさんで生活に困っている」という状態であれば、まとまった資金を得られるリースバックの活用がおすすめです。
住宅ローンを返済したいとき
「住宅ローンを早く完済して、安心して暮らしたい」「金融機関への返済負担を減らしたい」と考えるようになったときも、リースバックを検討するタイミングといえるでしょう。
ただし、ローンの返済が終わっても家賃の支払いが発生します。現在の住宅ローン返済額と家賃を比較したうえで判断してください。
相続資産を整理したいとき
リースバックを利用して自宅を現金化しておくことで、相続人の間で財産を均等に分けられるようになります。
遺産分割や納税などの問題が起こらないので、「子供たちに平等に遺産を残したい」「早めに生前整理しておきたい」など思っている方は、リースバックが選択肢のひとつとなるでしょう。
住み替えをしたいとき
自宅を売却して別の物件への住み替えを検討する際も、リースバックは有効な手段といえるでしょう。
リースバックを利用すれば、住み替えにかかる費用を確保できるのと同時に、引越す準備が整うまで自宅に住み続けることができるため仮住まいを手配する必要がありません。
リースバックを利用する流れ
1.問い合わせ・査定依頼をする
まずは、電話やWebで問い合わせてみましょう。
問い合わせも査定依頼も基本的には無料で、即日見積もりを出してくれる業者もあります。
2.簡易査定(机上査定)を受ける
問い合わせ後に簡易査定を希望すると、業者の担当者から電話やメールで買取金額と家賃を教えてもらえます。
ただし、簡易査定の段階では「住所」「間取り」「地図情報」などの情報をもとに算出しており実際の物件を見ていないため、あくまで目安と捉えておきましょう。
3.現地調査
現地調査では、不動産会社の担当者が室内状況や周辺環境を確認して本査定を行います。
現地調査が終わると、調査結果、希望する賃料、期間等の条件、市場価格の相場などの情報をもとに最終的な買取金額と家賃が提示されることになります。
4.不動産売買契約の締結
買取金額・家賃に納得したら、売買契約の締結を行います。
重要事項説明書の内容を確認し同意したあとに売買契約書へ署名・捺印する流れです。
5.残金決済・賃貸借契約の締結
不動産会社から手付金を差し引いた残代金が支払われたら、物件の引き渡しを行い賃貸借契約の締結に進みます。
この段階で、賃貸借契約に必要な家賃保証会社への加入料や火災保険加入料を支払うことが多いです。
6.賃貸生活スタート
リースバック完了後、いよいよ賃貸生活のスタートです。
毎月家賃の支払いは必要ですが、管理費・修繕積立金・固定資産税・都市計画税などの費用は発生しません。
リースバックのトラブルや後悔した事例
リースバックはメリットが多いものの、なかには取引する業者の選択を誤ったことによりトラブルが起きてしまうケースが存在します。
- 家賃の支払いができなくなった
- 賃貸借契約を更新できず退去になった
- 業者が倒産してしまった
これらのトラブルを回避するためには、基本的な知識を身につけておくことが不可欠です。
また、最初から一社に絞るのではなく、一括見積もりなどのサービスを活用して信頼できる業者を探すようにしましょう。
家賃の支払いができなくなった
リースバック後の家賃が想定よりも高額で、家賃の支払いが難しくなってしまうケースがあります。長く住み続けるつもりで売却したにも関わらず、退去せざるを得ない状況になってしまうかもしれません。
賃貸契約の更新時に家賃が値上げされることもあるので、家賃や値上げに関しては契約前に必ず確認しておきましょう。
賃貸借契約を更新できず退去になった
賃貸借契約が更新できずに退去になってしまったというトラブル事例もあります。
リースバックでは契約期間が2〜3年の「定期借家契約」になることが多く、貸主と借主の合意がなければ再契約できません。
貸主側が再契約を拒んだ場合、借主はどうすることもできないため、契約満了に合わせて退去することになります。
リースバックを利用して家を売却する際は、賃貸の契約形態(「普通借家契約」「定期借家契約」)をきちんと確認しておきましょう。
業者が倒産してしまった
なかには、リースバック業者が契約中に倒産してしまうというトラブル事例もあります。
この場合、業者の資産である不動産は売却され、新しい所有者によって退去を求められる可能性があります。
長期的なリスクを考慮するのであれば、事業規模の小さい会社や地場業者(いわゆる地域密着型の小規模な不動産会社)は避けるようにしましょう。
このようなトラブルに巻き込まれないためにも、事前にリースバック業者の調査をしておくことをおすすめします。
リースバックで後悔しないための対策
リースバックによるトラブルに巻き込まれたり、後悔したりするリスクを避けるために、以下の3点を意識してください。
- 重要事項を確認しておく
- 売却額と家賃は将来を見据えて判断する
- 信頼できる企業や担当者を選ぶ
では、それぞれのポイントを詳しくチェックしていきましょう。
重要事項を確認しておく
リースバックを利用する際は、契約の種類(「普通借家契約」「定期借家契約」)、契約期間、敷金・礼金などの初期費用、再契約の条件を確認してください。
リースバックでは売却金額に注目しがちですが、売却後も長く住み続けるのであれば賃貸借契約の内容も非常に重要です。
また、将来的に買戻しを検討している場合は、買戻し特約の有無も確認しておきましょう。
売却額と家賃は将来を見据えて判断する
リースバック後の家賃が高額になりすぎていないかという点も重要です。
売却価格や家賃設定が適正かを判断するには、複数の会社に見積もりを依頼する方法がおすすめです。適正価格を把握し、少しでも高く不動産を売却できるよう情報収集しておきましょう。
信頼できる企業や担当者を選ぶ
リースバック契約を結ぶ業者とは、自宅を売却したあとも長期間に渡って付き合っていく可能性があります。
そのため、「対応が丁寧で親切」「どんな疑問にも回答してもらえる」など、安心して任せられる担当者が在籍している企業が望ましいでしょう。
なお、売却後に企業が倒産してしまったというトラブルもあるので、ホームページなどから業歴・実績も確認してください。
リースバック以外の資金調達方法
リースバック以外の資金の調達方法としては、主に以下の3つがあります。
資金調達方法 | 特徴 |
---|---|
リバースモーゲージ | 自宅を担保に融資枠内で融資を受ける方法 |
不動産担保ローン | 不動産全般を担保に融資を受ける方法 |
任意売却 | 不動産を納得のいく価格で売却し取引を成立させる方法 |
リースバックとリバースモーゲージの違い
リバースモーゲージとは、不動産(自宅)を担保にして融資を受ける方法です。継続して自宅に住み続けられる点はリースバックと似ていますが、基本的な仕組み・特徴がまったく異なります。
比較項目 | リースバック | リバースモーゲージ |
---|---|---|
対象物件 | 不動産全般 | 戸建・マンションなどの住宅 |
対象者 | 法人・個人 | 個人 |
年齢制限 | 成人年齢に達していれば利用可 | 主に55~80歳が対象 |
毎月の支払い | 家賃 | 利息(最終的には元金を一括返済する) |
住宅ローンの有無 | 抵当権付きでも利用できる | 抵当権が付いていない不動産のみ |
所有権 | 買取業者 | 現在の所有者 ※売却時まで |
資金の使用用途 | 自由 | 制限される場合あり(事業・投資資金は不可など) |
固定資産税の納税義務 | なし | あり |
家族の同居 | 制限なし | 本人・配偶者・子供のみ |
契約終了後 | 買戻し可能 | 契約終了後(死亡後)に売却あるいは相続人による一括返済 |
リバースモーゲージの契約期間中は利息のみ支払いが必要で、元金は契約者本人が亡くなったあとに自宅を売却するなどの方法で一括返済します。
利用条件が厳しく、活用しにくい点がデメリットといえるでしょう。
不動産担保ローンとは
不動産担保ローンとは、不動産全般を担保として融資を受ける方法です。
毎月元本と利息分の返済を行い、返済終了後は自宅を資産として手元に残すことが可能です。
借入金の使途は原則自由なので、さまざまな目的に利用できます。
任意売却とは
任意売却は住宅ローン支払い困難者の救済手段で、不動産を競売にかけずに納得のいく価格で売却し取引を成立させることを指します。
通常、住宅ローンの返済が数ヵ月滞った場合は担保にしている不動産(自宅)が差し押さえられて競売にかけられる流れになるのですが、任意売却の場合は売却額がローン残債より少なくても一般市場で売りに出すことが可能です。
任意売却を行うためには住宅ローンを組んでいる金融機関の了承が必要で、不動産会社と連携を取りながら売却活動していくことになります。
リースバックについてよくある質問
ここでは、リースバックに関して多く寄せられる質問を確認していきましょう。
リースバックの仕組みを理解して後悔しないように利用しよう
リースバックは、不動産を活用した資金調達方法の選択肢のひとつです。
メリットだけでなくデメリットも理解した上で、本当にリースバックが最善の選択肢なのかを見極める必要がありますので、自分自身のライフスタイルの変化に合わせて検討をしていくことをおすすめします。