不動産を売却する際、必要になるのが査定です。
不動産売却には3種類の査定方法があります。
査定方法にはそれぞれ得意とするものがあるため、売却を考えている不動産に合わせて選ぶことが大切です。
この記事では「不動産の査定方法」や「価格の算出方法」、「査定時のポイント」について解説します。ぜひ不動産査定の参考にしてください。
不動産査定とは売却のためのスタートライン
不動産査定とは、不動産売却を考える際に必要なプロセスです。
不動産売却では必ず行います。
査定によって、不動産を少しでも高く売却するのに重要な「売り出し価格」を決めます。
- その物件にどれくらいの価値があるのか
- いくらで売却できるのか
これらを加味して推定売却価格を算出します。
査定価格がわかれば、売り出し価格や資金計画を立てられるようになります。
いわば、不動産査定は売却に向けてのスタートラインとも言えます。
3つの「価格」を知っておこう
不動産を査定する前に、まず価格について知っておきましょう。
不動産を売却する際、以下の3つの価格があります。
- 査定価格:不動産査定時に提示される金額
- 売り出し価格:不動産を実際に売り出す価格
- 成約価格:実際に取引された最終的な価格
これらを把握しておくことで査定時の混乱を避けてスムーズに売却を進めやすくなります。
不動産の査定方法は3種類ある
一口に不動産査定といっても、以下の3種類の方法があります。
査定を依頼する際は、それぞれの特徴を知った上で依頼しましょう。
AI査定
AI査定は、過去の成約事例を元にAIが不動産の価格を算出する方法です。
不動産会社のHPに必要な情報を入力するだけで簡単に査定できます。
入力項目も少なく、以下で完結する場合がほとんどです。
- 住所
- 築年数
- 面積
- メールアドレス
不動産会社によっては、他の情報を求められる場合もありますが、個人情報となるためどのような団体が運営しているHPなのかを必ず確認しましょう。
AI査定が適しているのはマンション
AI査定はマンションの査定に適しています。
建物の品質や性能に大きな差がなく、類似物件が多いためです。
比較対象が多いことから、取引事例のデータを集めやすいのが理由にあります。
特にマンションの多い都心部では、査定の精度が高くなります。
一方で、戸建ては家によって条件が大きく異なるため、AI査定には向いていません。
AI査定はマンションの査定で使いましょう。
AI査定はすぐに査定結果を得られる
AI査定は、様々なデータをAIが集約して査定する方法です。
即座に結果がわかるため、時間がない方におすすめです。
また、電話番号の入力も必要ないことから、営業電話の心配もありません。
ただし、入力情報が少ないのもあって、簡易査定や訪問査定と比べると精度が落ちる点には注意しましょう。
簡易査定
簡易査定は、不動産会社が物件の基本情報に基づいて査定を行う方法です。
実際に訪問せずに情報だけで判断するため、「机上査定」とも呼ばれます。
Webや電話、メールで簡単に依頼できますが、査定結果までは数日ほどかかるのが特徴です。
査定時は、以下の情報に基づいて判定してくれます。
- 類似物件の取引価格
- 過去の取引データ
- 最新の市場動向
- 公示地価
- 路線価
不動産の担当者が査定をするため、AIよりも精度が高くなります。
マンション・戸建ての両方に対応できる点もポイントです。
ただし、実際に訪問する訪問査定と比べると精度は落ちます。
おおまかに査定価格を知りたい方におすすめです。
訪問査定
訪問査定は、不動産会社の営業担当者が実際に物件を訪れて査定する方法です。
現地調査を行うため、以下の情報まで査定に反映されます。
- 建物の状態
- 室内の状態
- 近隣との境界
- 周辺環境
AI査定や簡易査定と比べて、より精度の高い査定ができます。
申し込み自体は電話やメール、Webと様々な方法で行えるので、依頼自体は簡単です。
実際の査定は1時間程度で終わり、結果はおおよそ1週間ほどかかります。
時間が必要な分、非常に精度が高い査定です。
訪問査定まですると後は売却するかどうかになるため、売却の意思が固まっている方におすすめの方法となっています。
不動産査定時の算出方法
不動産査定の算出方法には、以下の3種類があります。
不動産会社は、不動産の種類に合わせて使い分けています。
それぞれ詳しく見てみましょう。
- 取引事例比較法
- 原価法
- 収益還元法
取引事例比較法
取引事例比較法は、周辺の似ている物件の取引事例をもとに査定価格を算出する方法です。
主にマンションや土地の査定で使われています。
まず対象物件と似ている物件の過去の取引事例を集め、それらの成約価格を比較して査定価格を決定します。
その後、駅からの距離や室内の状態など、物件固有の状況を反映させる仕組みです。
計算式に表すと、以下のようになります。
試算価格=取引価格✕事情補正✕時点補正✕地域要因比較✕個別要因比較
類似性が高い物件や新しい事例を用いる場合ほど、精度が高くなっていきます。
過去の情報が重要となるため、取引実績の豊富な不動産会社に依頼すると良いでしょう。
原価法
原価法は、所有している不動産を再建設した場合に必要となるコストを元に算出する方法です。
主に一戸建てで使用されます。
簡単に言うと、今の建築相場を見出す方法です。
その金額から、減価分の修正をすることで試算価格を導き出せます。
計算式に表すと、以下のようになります。
試算価格=再調整原価✕(1-原価修正率)
なお、木造住宅の耐用年数は築22年となっています。
建築されてから22年が経過すると建物の価値がゼロになるため、注意しましょう。
逆に購入する場合は22年経過しているかどうかが大きなポイントとなります。
収益還元法
収益還元法とは、売却する不動産が将来生み落とすと予想される利益を元に算出する方法で、主にアパートやマンション、オフィスといった物件で利用されます。
収益還元法は、以下の2種類があります。
- 直接還元法
- DCF法
直接還元法
直接還元法は、その不動産が1年間で生み出す利益を、近隣の似ている物件の還元利回りで割って収益価格を求める方法です。
計算式で表すと、以下のようになります。
試算価格=年間の純理利益÷還元利回り
年間純利益とは、家賃収入から経費を引いた正味の利益のことです。還元利回りとは、年間純利益に対する利回りを指します。
DCF法
DCF法とは、将来得られる利益と売却価格に現在価格を換算し、合計して査定価格を求める方法です。
登記用の不動産で利用される査定方法です。
通常の不動産査定で使われることはまずありません。
基本は直接還元法を使われると覚えておきましょう。
不動産査定の流れ
不動産の査定は、大きく分けて2種類に分類されます。
売却しようか悩んでいるパターンと、既に売却の意思が決まっているパターンです。
今回は、前者の悩んでいるパターンの流れについて解説します。
既に売却の意思が決まっている方は、以下の流れの3以降から進めると良いでしょう。
- AI査定または簡易査定を依頼する
- 結果を受け取る
- 訪問査定を依頼する
- 訪問査定の対応をする
- 結果を受け取る
Step1.AI査定または簡易査定を依頼する
不動産の査定はまず、手軽にできるAI査定か簡易査定を依頼しましょう。
以下のやりやすい方法で依頼してみてください。
- 電話
- メール
- Webサイト
物件の情報を求められるケースもあるため、事前に坪数や築年数といった情報を集めておくとスムーズです。
Step2.結果を受け取る
次に査定の結果を受け取ります。
AI査定なら即時に出ます。
簡易査定でも数日以内には受け取れます。
査定結果を参考に、不動産を売却するかどうかを決めましょう。
Step3.訪問査定を依頼する
先に出した査定結果で売却へと心が決まったら、不動産会社に訪問査定を依頼します。
営業担当者とやり取りし、訪問査定を実施する日程を決める形です。
依頼は、以下の中からやりやすい方法で行いましょう。
- 電話
- メール
- Webサイト
- 直接会って話す
スムーズなのは、実際に話す電話か店舗での依頼です。
査定は1時間ほどかかるため、余裕のある日を指定することをオススメします。
Step4.訪問査定の対応をする
訪問査定当日は、対応も必要です。
営業担当者と直接コミュニケーションが取れる良い機会でもあります。
売却を進める中で密に連絡を取り合うため、関係性を作っておきましょう。
訪問査定では、周辺環境はもちろん家の内外など様々な部分を見られます。
なるべく綺麗にしておくとスムーズに進みます。
Step5.結果を受け取る
訪問査定から1週間程度で結果を受け取れます。
不動産を取り囲む様々な情報が加味された、精度の高い査定結果です。
この時に注意したいのが、1社だけに絞らないこと。
訪問査定は、不動産会社にとって営業活動の一環であるため、会社によって金額が変動します。
複数社に依頼し、どの程度が妥当な査定額なのかを把握しましょう。
不動産査定時のポイント
不動産の査定では、物件以外にも様々な要素で評価されます。
ここからは、査定時に見られる以下の評価ポイントを解説します。
- 築年数
- 室内や設備の状態
- 瑕疵
- 外装
- 土地の条件
- 周辺環境
- 立地
- 住宅ローンの残債
- 市場動向
築年数
築年数は、査定時に必ずチェックされるポイントです。
築年数によって売却価格が変わります。
一般的に、木造の方が価値が下がりやすいのが特徴です。
木造の一戸建てなら、築10年で新築の半分程度。
築20年ともなると1割程度の評価になります。
一方で鉄筋コンクリートの場合は、木造ほど評価が落ちません。
室内や設備の状態
建物は、使っていても使っていなくても状態が悪くなっていくものです。
以下は必ず劣化する場所として、評価のポイントになります。
- 壁
- 床
- 水廻り
築年数が更に増えると、雨漏りやシロアリ被害も出てきます。
査定前に室内や設備の状態を確認しておくと良いでしょう。
一方で、太陽光やエネファームのような付加価値となる設備があると、評価が上がる可能性があります。
リフォームやリノベーションも効果的ですが、費用面で解消できるかは不安が残ります。
気になる場合は、不動産屋に相談してみてください。
瑕疵
瑕疵も査定の評価に反映されるポイントの1つです。
近年注目されている事故物件も、瑕疵が影響しています。
瑕疵は4つに分類され、以下のようにそれぞれ意味が異なります。
- 物理的瑕疵:床の傾きや雨漏り、シロアリ被害や土壌汚染など
- 心理的瑕疵:自殺や殺人、火災などがあった
- 環境的瑕疵:周囲に反社会的組織の事務所や、騒音、異音、振動がある
- 法律的瑕疵:法律や条件などの制限によって自由な使用収益が阻害されている
これらの瑕疵は、義務ではないものの告知をしておきましょう。
告知をしないと、売却後に契約不適合責任を問われる可能性があります。
外装
外装も査定でチェックされるのが、外壁や屋根です。
物件を購入する際は、外壁は第一印象になります。
その部分が劣化や破損していた場合、管理状態が悪いと判断される可能性があるのです。
売却の際は、外壁に損傷がないかは必ず確認しておきましょう。
土地の条件
訪問査定では、土地の広さや形状が価格に影響します。
勘違いしがちなのが、広ければ高いというわけでない点です。
例え広くても、利便性が悪いのであれば土地の評価は低くなります。
また、旗竿地のような形状の土地は、安く評価されやすい傾向で、正方形のようにわかりやすい形が好まれます。
周辺環境
周辺環境も査定に影響を与える要素の1つです。
例えば以下のような環境が該当します。
- スーパーマーケット
- 商店街
- 学校
- 病院
これら日常生活に必要な施設が近くにあると、評価が高まります。
一方で、工場や墓地などが近くにあると評価が下がりやすくなります。
暮らしやすく治安の良いエリアほど、査定価格が上がりやすいと考えておいてください。
立地
立地も不動産の査定で評価されるポイントとなります。
生活のしやすさに直結するためです。
特に注目したいのが、最寄り駅からの近さ。
徒歩圏内だと、より評価されやすい傾向にあります。
また、最寄り駅の規模によっても左右されます。
地方の場合は、最寄り駅以外に高速道路のICが評価に加わるので、確認しておきましょう。
住宅ローンの残債
一般的に、住宅ローンが残っていると不動産の売却ができません。
そのため、ローン残債は不動産売却時に必ず確認されます。
もしローンがある場合は、手持ちの資金と売却益での返却か、任意売却のどちらかを選ぶ必要があります。
不動産を売却できるできないの判断となるため、ローンが残っている場合は必ず申告しましょう。
市場動向
市場動向も査定価格に影響を与えるポイントの1つです。
市場動向が悪いと、査定価格も低くなってしまいます。
不動産市場は、不動産業界だけでなく株価など経済の影響を大きく受けます。
例えばコロナ禍では、国土交通省によると全国100地区のうち38地区が下落し、上昇したのは1地区だけでした。
更に住宅ローンの金利や、ウクライナ侵攻による資材高騰も市場価格に影響を与えています。
様々な要因で市場が変動するため、不動産を売却する際は世の中の動きにも注目しておきましょう。
不動産の査定方法はまず簡単な査定から始めよう
不動産の査定方法は3種類あり、それぞれ特徴があります。
まずは気軽に査定できるAI査定を行い、簡易的な金額を知ってから売却を考えましょう。
査定をする際には知っておきたいポイントが複数あります。
中には築年や瑕疵など査定に大きく影響を与えるものもあります。
査定前に家の情報をなるべく集めるようにするとスムーズに進むでしょう。