まとまった資金を得る方法として、自宅を売却すると同時に賃貸借契約をして家に住み続けるリースバックがありますが、リースバックができないケースはあるのでしょうか。
この記事では、リースバックが可能な条件について解説します。
結論として、リースバック会社によって利用できる条件が異なりますが、多くの会社で提示される内容についてご説明します。
リースバックができない場合の対処法についても詳しく解説しますので、自分では判断が難しい場合の参考にしてください。
リースバックとは
リースバックは、保有する住宅をリースバック会社に一旦売却し、その後、リースバック会社に家賃を払って家を借りるという不動産の活用法です。
リースバックでは、売却と同時に賃貸借契約を締結します。
物件の所有者から借主になるため、売却後も住み慣れた住宅にそのまま住み続けられるのがリースバックのメリットです。
リースバックの審査について
金融機関による融資審査の場合、借り主の返済能力があるか厳しくチェックされます。
一方で、リースバックの場合は、買い主となるリースバック会社が各会社の審査基準において判断します。
判断の基準となるのは、「売却と賃貸が可能かどうか」という点です。
リースバック会社の審査は厳しいのか
資金調達方法は様々ありますが、家を担保にお金を借りる融資と比較して考えたときに、リースバックの審査はそれほど厳しくはありません。
リースバックは、融資のようにお金を借り入れるわけでないので、信用情報機関の審査は必要ないのです。
そのため、信用情報に自信がない方でも、リースバックを利用できる可能性があります。
リースバックを利用するための条件
リースバックは持ち家があれば比較的利用しやすい資金調達方法の一つですが、誰でも簡単に利用できるわけではありません。
多くのリースバック会社で条件としているのは以下の3つです。
- 名義人が全員同意している
- 物件の売却価格がローン残債を上回っている
- 毎月の家賃を問題なく支払える
これらの条件が満たされていない場合、利用を断られる可能性が高いです。
詳しくご説明します。
名義人が全員同意している
物件の名義が複数人いる場合、リースバックを利用する際に名義人全員の同意が必要になります。
売買契約書に名義人全員の署名や捺印が必要であるため、リースバックを利用してなるべく早く資金を調達したいのであれば、早めに連絡を取り、話し合うのが良いでしょう。
名義人との関係が疎遠になっており、連絡が難しい場合は、以下の方法を試してみましょう。
- リースバック会社に代わりに連絡してもらう
- 代理人を立てる
代理人を立てる場合は弁護士や司法書士などの専門家に委任状を作成してもらえば、取引は可能となります。
物件の売却価格がローン残債を上回っている
リースバックは、基本的に物件の売却価格が住宅ローンの残債を上回るケースで利用するものです。
ですから、オーバーローンを理由にリースバックを断られるかもしれません。
ただし、手元にその差額を賄えるだけの資金があれば問題ないでしょう。
実際にリースバックが利用できるかについては、
- 売却価格がいくらか
- ローン残債がどのくらいか
上記2点を知る必要があります。
アンダーローンとは
住宅ローン残債が売却額を下回る状況をアンダーローンと言います。
このケースでは、住宅を売れば住宅ローンが完済できます。
アンダーローンとの場合は住宅ローンが障害とならないため、問題なくリースバックが利用可能です。
オーバーローンとは
アンダーローンとは反対に、住宅ローン残債が売却額を上回る状況をオーバーローンと言います。
オーバーローンでリースバックを利用しても、住宅ローンが完済できないため、売却後も引き続きローン返済をしていかなければなりません。
住宅ローンの他に家賃の支払いも発生するため、二重払いになるというリスクもあります。
オーバーローンであるかを調べる方法
まず、住宅ローン残債を調べるために、住宅ローンの契約をした際に金融機関から送られてくる「返済予定表」または「残高証明書」を確認します。
書類がない場合は、金融機関の窓口やWEBサイトなどで確認しましょう。
そして、リースバック会社で自宅の査定をしてもらい、住宅の価格から住宅ローン残債を引きます。
プラスになっていればアンダーローン、マイナスであればオーバーローンとなります。
毎月の家賃を問題なく支払える
リースバック後は、新たに住宅の所有者となる会社と賃貸借契約を結び、住み続けるためには毎月の家賃を支払わなければなりません。
そのため、多くの会社では家賃が支払えるだけの収入があるかを確認します。
定年後、年金で生活している場合は、家賃を支払い続けられる十分な貯金があるかを確認します。
老後の資金調達のためにリースバックを利用する高齢者の方も多いですが、十分な貯金がない場合は、リースバックを断られる可能性が高いです。
リースバックができないケース
リースバックの利用条件について解決しましたが、ここではリースバックが利用できないケースを具体的にご説明します。
なお、実際に適用となるかはリースバック会社によって異なりますので、複数の会社に相談するのが良いでしょう。
十分な収入や貯金がない
リースバックを利用すると、家賃は相場と比較して割高になるケースが多いです。
そのため、十分な収入や貯金がなければ、リースバックをしても家賃が払えずに、住み慣れた住まいを退去せざるを得なくなります。
リースバックを検討しているということは、何らかの理由で資金が不足しているはずなので、後悔しないためにも、契約前に売却価格と家賃のバランスを確認し、支払い能力があるのかを判断しましょう。
住宅ローンの支払いが滞っている
融資よりも審査が比較的簡単だとされるリースバックですが、一度でも住宅ローンの返済で支払いを滞らせていれば、リースバック後も家賃を滞納する可能性が高いとみなされ、リースバックを断られるかもしれません。
万が一、リースバックができたとしても、売却後に家賃の支払いを滞納すると、強制退去となってしまうので、十分注意が必要です。
ただし、月々の住宅ローンの返済額が高く、既に滞納している方は、リースバックをすれば家賃が低く抑えられて支払い続けられるという状況ならリースバックがメリットにもなるので、査定を申し込むのは良い選択だと言えるでしょう。
住宅ローンの残債が多い
住宅ローンの残債があまりにも多いと、前述した通りオーバーローンとなり、リースバックが難しくなるでしょう。
手元に資金があれば住宅ローンの完済も可能ですが、手元の資金を増やすために利用するリースバックであるので、効果的な方法ではありません。
物件の価値が低い
リースバックは買い手にとって、投資物件となるため、流動性の高い物件であるかを判断されます。
ですから、買い手がつきやすい魅力的な物件であれば成功するかもしれませんが、資産価値が低い物件は断られる可能性が高いでしょう。
事故物件
一般的に「事故物件」と呼ばれる売却しづらい物件に住んでいる場合は、リースバックを断られるケースが多いです。
たとえ、売却できたとしても、市場価格よりもかなり安くなってしまいます。
とはいえ、事故物件であるのを隠して売却しようとするのは違法行為にあたるため、必ず報告しなければなりません。
建物に欠陥がある
リースバックできない物件の特徴として、建物自体に何らかの問題があるケースがあります。
具体的には以下の場合に当てはまります。
- 物件の造りや設備の不良
- 雨漏りやシロアリなどの物理的な欠陥
- 建築基準を満たしていない
- 第三者の再建築できない物件
- テナントが入っている物件
この場合、修繕するなど建物の欠陥を改善できれば、リースバックを利用できるかもしれません。
土地に問題がある
建物自体に問題はなくても、土地に問題があってリースバックできないケースもあります。
具体的には以下の場合です。
- 借地権が付いている物件
- 市街化調整区域にある物件
市街化調整区域とは、都市計画法で市街化を抑制する目的で定められた地域を指し、基本的には住宅を建築することができません。
このような物件では新たな買い手がつかず、リースバック会社が資金を回収できなくなってしまうため、リースバックを断られるでしょう。
リースバック会社の対象エリアではない
リースバック会社の対象エリアから外れている場合、断られてしまいます。
不動産相場価格が高く、一定の需要がある大都市圏に限定している会社も多くあるのです。
このケースでは、お住まいの地域に特化した会社、もしくは全国対応となっている会社を探すことで解決できるでしょう。
リースバックできない場合の対処法
一度リースバックを断られてしまった場合でも適応になる可能性があります。
また、他の資金調達方法も視野に入れてみましょう。
そこで、リースバックできない場合の対処法についてご説明します。
複数のリースバック会社に相談する
リースバックは運営会社によって売買価格や査定方法が異なります。
このように、リースバックができない理由は買い主の都合によるものなので、一方で断られたとしても、別の会社では利用できるかもしれません。
リースバック会社の中には買い叩いてくる悪徳な会社もありますので、そのような失敗を防ぐためにも、できるだけ複数のリースバック会社に相談し、自身に1番合う提案をしてくれる会社を見つけましょう。
悪徳な会社の特徴として、「強引に話を進めてくる」「しつこい勧誘がある」などが挙げられます。
資金力を上げる
「売却後の家賃の支払いが難しい」といった理由でリースバックを断られる場合でも、資金力を上げて支払い力があると判断されると、利用できる可能性があります。
これまでよりも高い給料の会社に転職をして収入を増やしたり、パートから正社員になったりと、月々の家賃の支払いが問題なく行えるようになると、リースバックがうまくいくでしょう。
通常の不動産売却をする
複数のリースバック会社に相談しても断られる場合、通常の不動産売却を検討しましょう。
その場合、まとまった資金を得られるかもしれませんが、引越しは余儀なくされます。
ですが、一般的にはリースバックよりも売却価格が高くなるケースが多いため、より高く買い取ってもらいたい場合はこちらの方が適しています。
家族や親族に市場価格で購入してもらう
どうしてもリースバックを利用したい場合、売却先をリースバック会社ではなく、家族や親族に物件を買い取ってもらい、その後賃料を払って住み続けるという方法もあります。
ただし、この場合は売却先に購入の意思や資金力がなければ成立しません。
身内間であれば融通が利きやすいですが、トラブルの元にもなりかねないので、慎重に考える必要があります。
リバースモーゲージを活用する
自宅を活用する資金調達の方法として、リバースモーゲージがあります。
リバースモーゲージは、持ち家を担保としてお金を借りられる仕組みで、家の持ち主が亡くなった際に担保としていた持ち家を売却し、借りていたお金を返済するものです。
リースバックは毎月の支払いは少額(利息のみ)で済むため、生活費が厳しい状況でも負担が減らせるでしょう。
ただし、資金用途の制限はリースバックよりも厳しく、利用できないケースもあります。
どちらにもメリット・デメリットがあるため、両者の特徴を理解して選択するのがおすすめです。
リースバックとリバースモーゲージとの違い
リースバックとリバースモーゲージは、それぞれ異なる特徴があります。
◯リバースモーゲージとの違い
リースバック | リバースモーゲージ | |
---|---|---|
仕組み | 家を売却して賃貸で住み続ける | 家を担保に融資を受ける |
調達できる金額 | 市場価格の6〜8割程度 | 市場相場の5割程度 |
年齢制限 | 制限なし | 60歳以上とする場合が多い |
対象者 | 個人または法人 | 個人のみ |
資金用途 | 制限なし | ・本人が居住する住宅の建設・購入 ・リフォーム、高齢者向け住宅への入居一時金、住宅ローンの借換え ・子世帯などの住宅資金(生活資金としては利用できない) |
住める人 | 誰でも住める | 本人と配偶者のみ |
リースバックはリースバック会社への「売却」であり、リバースモーゲージは金融機関からの「融資」という点が異なり、年齢や用途に制限がないのがリースバックです。
リースバックの条件を理解することが大切
賃料を支払うことでまとまった資金を得ながらこれまで通り自宅に住み続けられるリースバックですが、これまでお話ししたように、条件によっては利用を断られる可能性があるのです。
そのため、リースバックを検討している方は、あらかじめ利用できる条件に当てはまるかどうか確認してみてください。
リースバックできないと判断される場合でも、問題を解決できれば利用できるため、他の資金調達の方法をも考えながら対処していきましょう。