「戸建ての持ち家を売却してまとまったお金が欲しい」
「マイホームには売却後も住み続けたい」
このような時、リースバックを検討してみてはいかがでしょうか。
この記事では、戸建てリースバックの仕組みや手順について解説します。
戸建てリースバックは、住み慣れた住宅に住み続けられる資金調達の方法で、老後資金や事業資金などに活用できるのです。
マンションリースバックの違いについても説明しますので、まとまった資金が必要な場合は、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
リースバックとは
そもそもリースバックとは、保有する自宅をリースバック会社に一旦売却し、その後、リースバック会社に家賃を払って家を借りるという不動産の活用法です。
リースバックでは、売却と同時に賃貸借契約を締結します。
所有者から借主になることで、住み慣れたマイホームには売却後もそのまま継続して住み続けられるのです。
戸建てリースバックについて
不動産リースバックでは、以下の様々な不動産でリースバックできます。
- 一戸建て
- 集合住宅(マンション)
- 土地
- 店舗
- オフィス
- ホテル
- 工場
その中でも戸建て(独立した一棟の住宅)をリースバックする人は近年、高齢者の世代で特に増えています。
その理由として、「高齢者の持ち家率の高さ」や「老後の不安」、「経済的事情で住宅ローンが払えない」などが挙げられます。
売却とリースバックはどちらが良いのか
まとまった資金が必要で、「持ち家を売却する」か、「リースバックを活用する」かで迷われる方も多いでしょう。
そこで、通常の不動産売却とリースバックする場合との違いを解説します。
売却までの期間
売却して現金化するまでのスピードは、リースバック会社へ売却するリースバックの方が早く、2週間〜1ヶ月程度とされています。
通常の不動産売却の場合、仲介会社へ依頼し、買主を探す必要があるため、3ヶ月〜6ヶ月程度かかるのが一般的です。
そのため、急な資金調達が必要な場合は、リースバックの方が向いていると言えるでしょう。
引越しが必要か
リースバックの特徴として、売却した家にそのまま住み続けられるというものがあるため、引越しの必要はありません。
通常の不動産売却では、売却する際に引越しをしなければならず、新しい所有者がその家に住むことになるのです。
そのため、リースバックは持ち家に愛着があり、「まとまった資金は欲しいが家に住み続けたい」という方に向いています。
売却を第三者に知られるか
不動産売却の場合、第三者にその事実が知られ、「お金に困っている」と受け取られて肩身の狭い思いをするかもしれません。
ですが、リースバックは公に販売活動をしないため、周囲の人に知られることなく売却でき、これまでと変わらず安心して生活が続けられます。
売却金額
リースバックは、市場で売却する不動産売却と比べて売却価格が安くなる傾向にあります。
なぜかと言うと、リースバック会社が家賃収入を得るため、利回りを重視して査定するほか、借り主の家賃滞納リスク、自由に売買できないなどの制約を抱えているなどの理由があるからです。
市場価格よりも6〜8割程度になる可能性があり、多少時間がかかっても多くの現金が欲しいという方は、リースバックよりも一般の不動産売却の方が向いているかもしれません。
買い戻しができるか
一般的に、一度売却した資産の所有権は第三者に移行されます。
ですが、リースバックの場合、売却時に「再売買予約権」をつけて売買契約を締結することで、買い戻しが可能になるのです。
リースバックの買戻し時の価格は、売却価格の1.1倍から1.3倍程度になるケースが多いですが、一時的にまとまった資金が必要で、将来的に買い戻しを希望するのであれば、リースバックという方法をとるのが良いでしょう。
戸建てのリースバックの流れ
戸建てをリースバックする場合、主にこのような流れで進んでいきます。
- リースバック会社に相談する
- 家の査定をしてもらう
- 売買契約・賃貸借契約をする
- 売却代金を受け取る
- 家賃を払い、これまで通り家に住む
売却までの期間が短いのが特徴のリースバックですが、早めにまとまった資金が必要な方は、リースバック会社とのやり取りをスムーズに進めなければなりません。
リースバックの流れについて、詳しくご説明します。
①リースバック会社に相談する
まず初めに、リースバック会社に相談し、戸建ての机上査定をしてもらいます。
基本的に相談料は無料です。
リースバックを取り扱う会社は多くあるので、インターネットにて各会社のサービスの特徴を把握したうえで、複数の会社に相談し、希望に合う金額・条件を提示した会社と契約を結ぶのが良いでしょう。
大手企業と中小企業がありますが、それぞれに特徴がありますので、以下を参考にしてください。
大手企業 | ・知名度があり信頼感がある ・倒産の可能性が低い ・質の良いサービスが期待できる ・忙しくスムーズな対応ができないことがある ・融通が利かない可能性がある |
中小企業 | ・細やかな対応が期待できる ・地元の情報に詳しい ・倒産の可能性がある ・知名度が低く信頼性に欠ける |
②家の査定をしてもらう
リースバック会社に相談したら、物件査定が行われます。
リースバック会社が不動産の正確な査定をするため、戸建ての現地まで出向き、必要な情報を確認しなければなりません。
そのため、机上査定はすぐに査定額が出ますが、本査定は多少時間がかかります。
また、リースバック会社は、家賃による収益を目的としており、利回りを重視して査定するため、一般的な市場価格よりも安くなる傾向にある点を覚えておきましょう。
③売買契約・賃貸借契約をする
査定額に納得し、契約条件に問題がなければ売買契約をします。
売買契約と同時にリースバック会社と賃貸借契約を結ぶことで、売却後もその戸建てにそのまま住み続けられるようになるのです。
リースバック契約は基本的に「売買契約」と「賃貸借契約」の2つですが、もし戸建ての買い戻しを希望するのであれば、「再売買の予約契約」を交わす必要があります。
④売却代金を受け取る
契約手続きが完了すると、売り主に戸建ての売却代金が支払われます。
この時点で戸建ての所有権があるのはリースバック会社です。
賃貸借契約で定めた日から家賃が発生します。
⑤家賃を払い、これまで通り家に住む
売却後は引越しする必要がなく、毎月の家賃を支払えばこれまで通り住み続けられます。
ただし、売却してしまうと、新しい所有者が決めた賃貸住居としてのルールを守らなければならず、ルールを破ったり家賃を滞納したりすると契約解除されてしまう可能性があるので、十分に注意しましょう。
戸建てとマンションでのリースバックの違い
リースバックは戸建てに限らず、マンションでも利用可能です。
しかし、一般的にマンションよりも戸建ての方がリースバックしやすいとされています。
リースバックについて、戸建てとマンションとの違いをご説明します。
戸建ては現地調査が必要
戸建てはマンションと違って独立して建てられているため、個別の査定をするために現地調査が必要不可欠です。
リースバックの現地調査では、調査員が訪問し、建築図面や登記図面との照合が行われるほか、以下の項目を確認します。
- 接道状況
- 隣地との境界線
- 隣地との高低差
- 隣地との擁壁の種類 など
一方、マンションは管理会社に確認すれば状況の把握ができますし、他の部屋が売りに出ている場合はその査定額が利用できるため、現地調査が不要なケースが多いです。
現地調査で査定対象となる、戸建て特有のリスクや対処法をご説明します。
接道義務を果たしていない場合
接道状況務を果たしていない土地は、リースバックの対象にならない可能性があります。
接道義務は、建築法で定められている道路と敷地に関する規定で、「建築物の敷地は、2m以上接していなければならない」というものです。
接道義務を果たしていない物件は取り壊して再建築できませんが、セットバック(敷地や建物を後退させる)によって解決できるため、戸建てで接道義務を果たしていない場合、このままでもリースバックが可能な会社を探す必要があります。
隣地との境界線が明確でない場合
隣地との土地の境界線が不明確だと、売却後に隣地とのトラブルに発展する可能性が高く、リースバックできなかったり、買いたたかれたりするケースがあります。
この場合、土地の分割申告図や地積測量図、境界確認書などの境界が分かる証書があれば安心して契約できるでしょう。
隣地との高低差がある場合
ひな壇状に住宅街を形成している場合などは、隣地や道路との間に高低差が生じます。
仮に、隣地との間に2m以上の高低差が生じている土地は、安全性確保のために高さ2m以上の擁壁を設置しなければならなかったり、補強工事が必要になったりするのです。
このような戸建てをリースバックする際は、なかなか買い手が付かないケースが多い点を理解しておきましょう。
なお、擁壁についての建築基準法の基準は以下の通りです。
- 鉄筋コンクリートまたは石造りなど、腐食しない素材で作った擁壁であること
- 石造りにする場合はコンクリートで石同士を接着すること
- 排水を考慮して水抜き用の穴を用意すること
- 構造の強さを計算して、一定以上の安全性を確保すること
戸建ては管理費などの費用負担がない
マンションをリースバックすると、管理費や修繕積立金などについては、原則としてリースバック会社が支払います。
ですが、リースバック会社がこのような費用の負担を敬遠し、マンションのリースバックを行わない会社もあるのです。
また、管理費や修繕積立金が月々の賃料に含まれるケースも多く、利用自体は可能でも家賃が割高になる可能性があります。
その点、戸建てにはこのような月々の負担がないため、リースバックがしやすいと言えるでしょう。
戸建てはマンションよりも資産価値が高い
戸建てとマンションとでは査定方法も異なり、戸建ての場合、戸建て自体の価値と土地の価値両方がリースバック時の査定額となります。
たとえ住宅部分が劣化していたとしても、土地自体の劣化はなく、不動産需要によっては土地の価値が高くなっている可能性もあり、資産価値がマンションよりも高くなる傾向にあるのです。
ただし、建物のみでいうと、木造の戸建てよりも鉄筋鉄骨造のマンションの方が築年数が経っても資産価値が残るでしょう。
居住エリアを変えたくない場合は戸建ての方がリースバック向き
一般的に、リースバックするよりも不動産売却をする方が高く売れます。
それでもリースバックを利用する理由として、居住するエリアや住環境を変えたくないという方も多いでしょう。
戸建てはプライバシーを確保しやすく、マンションよりも広いため魅力がありますが、戸建ての賃貸物件を探すと、これまでの居住エリアに住むのが非常に困難であるため、通常の売却ではなく、リースバックを選ぶケースが多いです。
マンションの場合は、通常の不動産売却をしても、同じエリアで似たマンションを選びやすいため、リースバックする必要性がなくなります。
戸建てをリースバックする時のリースバック会社を選ぶポイント
リースバックを活用する場合、様々な視点からリースバック会社を選ばなければ、契約後に後悔する可能性があります。
そこで、戸建てをリースバックする際のリースバック会社の選び方についてご紹介しますので、比較の参考にしてください。
戸建ての取り扱いに強い会社であるか
リースバック会社によって、得意とする物件の種類が異なります。
中には、「マンション」「戸建て」など、特定の物件のみを取り扱っている会社もあるので、事前に確認しておきましょう。
また、地方にお住まいの場合は、大手よりも地域密着型のリースバック会社を選んだ方が高く買い取ってもらえる可能性が高いので、その点も考慮して相談してみてください。
納得できる買取金額を提示するか
一般的に、リースバックで戸建てを売却する際の査定価格は市場価格の6〜8割程度ですが、リースバック会社によって買取基準が異なり、査定額が大きく異なります。
納得する価格で売却するためには、複数の会社に見積もりを出してもらいましょう。
また、これまで通り戸建てに住み続けるために家賃を毎月支払いますが、利回りも会社によって異なるので、今後家賃を払い続けられる金額であるかをよく確認して選定する必要があります。
賃貸借契約の種別が希望に合っているか
リースバックでは、リースバック会社と賃貸借契約を結びますが、賃貸借契約には主に以下の2種類があります。
- 普通借家契約
- 定期借家契約
普通借家契約では、正当な理由がなければ所有者が契約更新を拒めず、半永久的に住み続けられますが、定期借家契約の場合、契約期間が定められており、契約期間後は正当な理由がなくても再契約を拒めるのです。
「2〜3年住み続けられたら良い」という方は定期借家契約でも良いかもしれませんが、売却後もそのまま永続的に住み続けたいという方は、普通借家契約ができる会社を選びましょう。
買い戻しができるか
リースバック契約後に戸建てを買い戻したいと考えているのであれば、「再売買予約権」をつけて売買契約を結んでもらえる会社であるかどうか確認するのもポイントです。
もし、再売買予約による買い戻しが口約束でしかしなかった場合、買い戻しを拒否される可能性があります。
リースバックを行う際は、つい売却価格にのみ目が行きがちですが、売却後に発生する家賃や買い戻し額についてもしっかり確認しておきましょう。
売却後も家に住み続けたいならリースバック
住み慣れたマイホームに愛着があるものの、まとまった資金が必要な場合は、売却後も住み続けられるリースバックを活用するのもおすすめです。
戸建てはマンションやアパートに比べてリースバックがしやすく、築年数が経っていても土地の価値は下がりづらいため、リースバック向きだと言えるでしょう。
買い戻しを検討している方は、売却額よりも買い戻し額が高く設定されているケースが多いため、数年後に向けて綿密な計画を練るようにしてください。