不動産投資において、築50年のマンションを売りたいと思っている方の中には
「築年数が経つほど売れにくくなるのではないか」
「築50年のマンションを相続したけれど、売れないのではないか」
といった不安を抱えている人もいるのではないでしょうか。
結論として、築50年のマンションは売れないというわけではありませんが、築浅マンションに比べて売れにくいのは事実です。
この記事では、そんな築50年のマンションを売却するための方法をご紹介します。
築50年でも売れているマンションの特徴や売るためのコツを押さえ、売却がスムーズに行くように行動しましょう。
築古マンションとは
建てられてからかなりの年数が経っているマンションを「築古マンション」と呼びます。
「築古」が築何年から何年までを指すのかという明確な定義はありません。
ですが、約5~10年以内は築浅マンション、築20年以上だと築古マンションと呼ばれるのが一般的です。
築50年も経っているものは、築古マンションの中でもかなり古い物件だといえるでしょう。
築50年のマンションには住めるのか
築50年経過したマンションは住めないかというと、決してそういうわけではありません。
実際のマンションの寿命は40年前後で、その前に建て替えしているケースが多いです。
ただし、しっかりとメンテナンスを行えば50年以上住むことは可能です。
築古マンションには需要があるのか
築50年のマンションは必ずしも売れないわけではなく、売却も多くされています。
ですが、建物の築年数が古くなるほど資産価値が下がり、成約件数も下がっているのは事実です。
〇東京都の中古マンション築年数別成約状況(2023年1~3月)
~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | ~築25年 | ~築30年 | 築30年~ | |
件数(件) | 375 | 805 | 625 | 719 | 545 | 327 | 1,412 |
㎡単価(万円) | 135.6 | 111.8 | 103.7 | 94.6 | 85.1 | 70.7 | 62.2 |
価格(万円) | 7,984 | 7,136 | 6,538 | 6,301 | 5,651 | 4,305 | 3,114 |
専有面積(㎡) | 58.9 | 63.8 | 63.1 | 66.6 | 66.4 | 60.9 | 50.1 |
(出典:東日本不動産流通機構「首都圏中古マンション・中古戸建て住宅地域別・築年帯別成約状況(2023年1~3月)」より作成)
築50年マンションの売却相場は?
築50年の中古マンションの相場はおよそ1,000万円~3,000万円程度です。
建物の状態や立地場所によっても変動しますが、一般的に築0〜5年マンションの半額程度となっています。
東京や神奈川など立地が良ければ2,000万円台での売却も可能ですが、全国の多くのエリアでは1,500万円を下回る物件が多いです。
〇築年数別平均売却価格(2021年)
価格(万円) | 面積(㎡) | ㎡単価(万円) | |
築0~5年 | 6,239 | 55.40 | 112.61 |
築6~10年 | 5,462 | 57.60 | 94.83 |
築11~15年 | 4,686 | 59.06 | 79.35 |
築16~20年 | 5,067 | 65.85 | 76.95 |
築21~25年 | 3,979 | 65.03 | 61.18 |
築26~30年 | 2,419 | 53.75 | 45.00 |
築31年~ | 2,358 | 50.02 | 47.15 |
(出典:築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2021年) レインズより作成)
築50年マンションが売れないと言われる理由
全く売れないというわけではありませんが、新築や築浅のマンションと比較してなぜ売却しにくいのか、理由として考えられるのは、以下の5つです。
- 旧耐震のマンションだから
- 住宅ローン減税の対象にならないから
- 建物の仕様が古いから
- 修繕積立金が割高だから
- 管理体制が機能していない物件が多いから
旧耐震のマンションだから
1981年6月に定められた現行の耐震基準では、震度6以上の地震で建物が倒壊しないことが定められています。
ですが、旧耐震基準では「震度5強程度の地震で倒壊しないこと」を条件としているため、地震大国である日本の大規模地震に備えるためには、旧耐震基準でつくられている築50年マンションでは不安が残ります。
旧耐震基準のマンションが全て危険というわけではありませんが、新耐震基準のマンションを選ぶ人の方が多いです。
旧耐震基準(1981年5月31日以前) | 新耐震基準(1981年6月1日以降) |
震度5程度の地震で即座に建物が崩壊しないこと | 中規模の地震(震度5強程度)でほとんど損傷しないこと(軽いひび割れ程度) |
基準なし | 大規模の地震(震度6強~7程度)で倒壊・崩壊しないこと |
住宅ローン減税の対象にならないから
住宅ローン減税の対象となるのは基本的に、1982年以降に建築された新耐震基準に適合する住宅となっています。
築古物件でも現行の耐震基準を満たせば対象になり、以下の方法で控除を受けられます。
- 耐震基準適合証明書を取得する
- 既存住宅性能評価書を取得する
- 既存住宅売買瑕疵保険に加入する
ただし、築50年の物件で住宅ローン減税を受けられるマンションは少なく、売れない原因となります。
建物の仕様が古いから
設備や建物の古さに不安や嫌悪感を抱いて購入をためらうケースや、セキュリティ面が重視されていないために敬遠されるケースはよくあります。
たとえば「エレベーターがない」「エントランスがオートロックではない」など、防犯や使いやすさと言った点でも近年建てられているマンションと比べて劣るため、あまり受け入れられません。
修繕積立金が割高だから
修繕積立金は、マンションや共用部分のメンテナンスのために区分所有者が管理組合に支払う費用です。
築50年のマンションとなると建て替えの問題も発生するため、修繕積立金が値上がりしていくケースが多くなります。
修繕積立金が高いと購入後の維持費が高くなってしまうので、売却しにくくなるのです。
管理体制が機能していない物件が多いから
マンションの寿命は、適正なメンテナンスが行われているかどうかで大きく変わります。
しかし築50年のマンションは管理体制がずさんなケースも多く、建物の劣化などがあっても適切な修繕を行っていない可能性があるのです。
また、近隣トラブルや家賃、共益費・管理費の滞納など、マンション全体の問題を抱えているせいで買い手が見つからないといった管理体制が機能していない物件であることも考えられます。
築50年のマンションを所有し続けるとどうなる?
築50年を超えるマンションを売ろうと思ってもなかなか買い手がつかず、所有し続けているとどうなるのでしょうか。
ここでは、売れない築古マンションを所有し続けることによって生じるリスクについて解説します。
売却の難易度が高まる
マンションの築年数が経過すると劣化も進み、さらに売却が難しくなります。
日本は少子化が進んでおり、これから物件を購入しようとする若い世代は少なくなっているため、築古マンションではますます売れなくなってしまうのです。
所有者の負担が多くなる
修繕積立金、管理費の増加、固定資産税の負担など、所有者にとってさまざまな問題が生じます。
時間が経過すると補修しなければならない場所も増えてくるため、所有者の負担がますます大きくなるでしょう。
相続者にとって負の遺産になる
マンションを自分の子どもに相続する際に大きなリスクとなります。
万が一、築50年マンションがこのまま売れず、所有するだけで費用だけがかさむようであれば、負の財産を自分の子どもに残すことになりかねません。
相続放棄できると言っても、特定の遺産だけ放棄することはできないため、築古マンションを所有する際はその点も考えておかなければなりません。
築50年でも売れるマンションの特徴
「築古マンションは売れにくい」とされていますが、築50年でも売れているマンションはたくさんあります。
では、どのようなマンションが売れているのか、その特徴を詳しく見ていきましょう。
立地が良い
「築年数」よりも「立地」の方が強い影響を与えるため、立地が良いマンションは需要が高いです。
とくに昔は、「立地が良くなければマンションは売れない」という認識が強かったため、古いマンションほど立地が良い傾向にあります。
立地が良い物件は、たとえ古くても売却にさほど問題はないでしょう。
また、立地が良ければ土地価格も高いため、高く売ることも可能です。
フルリフォームされている
築年数が経過している物件は、外見が良くなかったり設備に問題があったりとマイナスイメージがあるため、売れにくいのが現状です。
ですが、これらはリフォームやリノベーションによって改善でき、フルリフォームされている物件であれば、売却がうまくいくケースも多くあります。
ただし、フルリフォームする費用が想像以上にかかってしまう恐れもあり、買主は見つかりやすくなるものの、査定価格がそれほど上がらず損をする可能性もあるので注意しましょう。
リフォームやリノベーションがしやすい
築古マンションは価格が安く手に入るため、購入者が自由にリフォームやリノベーションしやすいという点でも好まれています。
自分の好みの部屋にしやすいため、リフォームやリノベーション前提で購入する物件としてふさわしければ、築50年のマンションでも買い手がつきやすいです。
価格が安い
築50年のマンションは新築のマンションと比較すると、購入価格を安くできる点が大きなメリットだと言えます。
新築の半額~3分の1ほどの価格で購入できるのが魅力です。
管理体制がしっかりしており改修や修繕が行われている
管理組合がしっかり機能していれば、たとえ築古マンションであっても売却しやすいでしょう。
改修や修繕が行われているマンションは寿命も長くなり、築50年であっても高く売却できる可能性もあります。
築50年のマンションを売る方法
築50年マンションを売りたいけれどなかなか売却できない場合、どのようなアクションをするべきかを具体的に説明します。
ホームインスペクションを実施する
ホームインスペクション(住宅診断)とは、住宅に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が、第三者的な立場から、また専門家の見地から、
- 住宅の劣化状況
- 欠陥の有無
- 改修すべき箇所やその時期
- おおよその費用 など
上記を見極め、アドバイスを行う専門業務を言います。(引用:NPO法人日本ホームインスペクション協会)
病院で例えると健康診断のようなもので、建物のコンディションを把握することで取引を安心して行えるようになるのです。
マンションを売り出す前にホームインスペクションを実施していれば、買い手に安全性をアピールしやすくなるでしょう。
古いマンションの売買に長けた不動産会社を探す
優秀な不動産会社を選ぶのも、マンション売却においては重要です。
特に古いマンションの売却を得意とする不動産会社は、専門的知識が豊富で、ノウハウもあります。
そのためにも、複数の業者に査定を依頼しましょう。
周辺の競合物件よりも価格を下げる
周辺の競合物件よりも安ければ、買い手が付く可能性があります。
ただ、築50年マンションは競合物件よりわずかに下げても、あまり効果は表れません。
違いがはっきり分かるように差をつけた方が売れやすいでしょう。
ハウスクリーニングを行う
内覧時に清潔感をアピールするためにも、必要に応じて清掃業者に依頼し、ハウスクリーニングを行うのも良いでしょう。
ハウスクリーニングを行うメリットは以下の通りです。
- 値引き材料にされにくくなる
- 部屋の印象が良くなる
- 早期売却の可能性が高くなる
- 買取査定が良くなる可能性がある
しかし、築50年マンションは、リフォームやリノベーションを行う前提で購入を検討する人も多いため、ハウスクリーニングをしたからといって効果があまり期待できないという考え方もあります。
建て替えが決まっている場合は建て替え後に売却
大規模改修工事の予定がある場合は、すべて終了してから売却すると、売却できる可能性が高まります。
また、売却金額も高くなるでしょう。
築古マンションの売却は早めの対策が大事!
築50年のマンションは、条件が良ければすぐに売却できるケースもありますが、売れにくく、所有者の負担がどんどん大きくなる場合もあります。
ですから、マンションを売却したいと思っているのなら早めの対策が必要です。
築50年でも売れるマンションの特徴、売るための方法を把握し、必要な対策を講じましょう。