【認知症の人が入れる介護施設】探しかたや費用について解説

認知症の人が入れる施設と費用の目安を知りたい」
「介護施設の費用が払えない場合、どうやって費用を工面すればいい?」

認知症の人を施設に入れることを考え始めたときに、心配になるのが介護施設とその費用です。
「認知症の人には、なるべく快適に過ごしてほしい」と考える反面、介護している限り続く費用面も心配です。

この記事では、認知症の人が利用できる施設とその費用の目安をわかりやすくまとめました。
さらに、介護施設に入れる際に必要な費用の工面方法についても紹介しています。

最後まで読んでいただければ、認知症の人も介護する人も満足できる施設を選ぶことができ、費用の心配も解消できます。

今すぐ費用を得る方法を知りたい人は、以下をご覧ください。

目次

認知症の人が入れる施設と費用の目安

認知症の人が入れる施設と費用の目安

認知症の人が入れる主な施設は、次の4つです。

認知症の人が入れる施設
  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護付き有料老人ホーム 
  • サービス付き高齢者向け住宅(特定施設)
  • グループホーム

それぞれの施設に入る場合に必要な入居一時金と月額利用料についてもまとめてみました。(全国平均)

公的施設民間施設
特別養護老人ホーム(特養)介護付き有料老人ホームサービス付き高齢者向け住宅(特定施設)グループホーム
入居一時金(平均)不要391.4万円27万円8.6万円
月額利用料(平均)6万円23.8万円16.1万円12.5万円

認知症の人が入れる施設について、それぞれ詳しく確認していきましょう。

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホームとは、主に身体や精神に障害をもち、日常生活において常時介護を必要とする高齢者が入居する公的施設です。

入居一時金がかからず、月額利用料も安いなど、費用面でメリットがあります。

介護度や入居する居室のタイプ、食事の嗜好など、望むサービスによって月額料金が変動します。
介護スタッフが24時間常駐しており長期入居が基本なので、介護が長く続きそうな場合も安心です。

ただし特別養護老人ホームは、看護師の24時間配置が義務づけられていないため、認知症が進んでいる場合は入居できないこともあります。

需要が非常に高いため、入居までに時間がかかることはデメリットといえるでしょう。

介護付き有料老人ホーム

介護付き老人ホームは、行政から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている、主に民間の介護施設です。
24時間スタッフが常駐しているため、認知症の人でも安心です。

介護付き有料老人ホームは、医療体制が整っているものや、ペットと暮らせるなど、
それぞれに特色があり、入居一時金に関しても施設ごとに差があります。

費用が高い分、手厚いサポートや生活の快適性が向上するといった点は魅力と言えるでしょう。

中には入居一時金が不要な施設や、月額費用を高く設定することで入居金を不要にしている施設もありますので、介護付き有料老人ホームを選ぶ場合には比較検討が必要です。

サービス付き高齢者向け住宅(特定施設)

サービス付き高齢者向け住宅とは、高齢者が安全かつ自立した生活を継続できるように設計された住宅のことで、 「一般型」と「介護型」の2種類があります。

一般型は、とくに要介護認定を受けていない高齢者や、軽度の介護が必要な人々を対象としており、バリアフリー住宅での自立した生活や日常生活のちょっとしたサポートをしてくれる施設です。

一般型のサービス付き高齢者向け住宅は、24時間のサポートや介助はサービスに含まれていませんので、認知症の人を見守ってもらうには外部のサポートを依頼する必要があります。

また、そもそも認知症を受け入れているかどうかは、施設によって異なります。

介護型は、都道府県から「特定施設入居者生活介護」という認定を受けており、介護士や看護師が常駐しているため、手厚いサービスを受けられるのが特徴です。

認知症の人が入居するなら介護型になりますが、全国にあるサービス付き高齢者向け住宅のほとんどが一般型です。

介護型サービス付き高齢者向け住宅を探しても、なかなか見つからないおそれがあります。

グループホーム

グループホームは、認知症の人を対象とした施設で、少人数で共同生活を送ります。

認知症ケア専門のスタッフが常駐しているため、専門的な知識で的確な対応をしてもらえるのが魅力です。

家事などの日常生活を入居者と分担して行うなど、自立した生活を目指すことで、認知症の進行を緩やかにする目的もあります。
費用もさほど高くないので、利用しやすいのがメリットです。

しかし、地域密着型の施設なので、施設がある市区町村に住民票がある人しか入居できません
また、定員数が少ないので、入居待ちになることが多いこともデメリットのひとつといえるでしょう。

認知症の人が施設入居後に必要な月額費用

次に、認知症の人が施設に入居したあとにかかる費用について考えてみましょう。

施設に入居したあとにかかる費用
  • 居住費・管理費
  • 水道光熱費  
  • 食費
  • 介護サービス費用
  • 日常生活費

これらの費用は、施設に入居したあと入居している期間、毎月支払いが発生します。

入居時に、月々の支払いが可能かどうかの審査がある施設もありますので、あらかじめ考慮しておくことが必要です。

毎月どのくらい必要になるかは施設ごとに異なるので、入居を検討する上で確認しておきましょう。

施設を利用する際に使える助成制度

施設を利用する際に使える助成制度

認知症の人が施設を利用する際に使える主な助成制度は、次の通りです。

主な助成制度
  • 特定入所者介護サービス費
  • 高額介護サービス費
  • 利用者負担軽減制度(社福減免)
  • 生活福祉資金貸付制度
  • 生活保護

経済的な不安がある場合は、積極的に助成制度を活用すると良いでしょう。

ひとつずつ詳しく説明していきます。

特定入所者介護サービス費

特定入居者介護サービス費は、所得や資産などが一定の基準以下だった場合に、食費や居住費を軽減してもらえる制度です。

所得に応じた自己負担限度額になっており、この限度額を超えた分に関しては支払いが不要です。

特定入所者介護サービス費の支給を受けるには、負担限度額認定を受けるために、住んでいる場所の市区町村に申請してください。

特定入所者介護サービス費の適用要件は、夫婦の収入や資産などに条件があるため、自分がどの区分に当てはまるのかについても確認が必要です。

なお、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、グループホームは特定入所者介護サービス費受給の対象外になっています。

高額介護サービス費

高額介護サービス費は、1か月に利用した介護サービス費が一定額を超過した場合、超過分が後日返金される制度です。

要介護度が上がると、介護サービスの利用も増え、費用負担も増加します。

その負担を軽減するため、所得区分ごとに上限額を設けて費用の払い戻しを受けられます。

令和3年8月の利用分から負担限度額の見直しが行われ、高所得者世帯の介護費用負担が増加しました。

施設スタッフによる介護サービスを受けた際に発生する介護サービス費の自己負担額は、高額介護サービス費の対象となります。

ただし、介護サービス費が払い戻されるわけではありません。
次のものは、高額介護サービス費の対象外ですので、注意してください。

  • レクリエーションの材料代
  • 医療費
  • 食費
  • 日常生活費
  • 居住費

利用者負担軽減制度(社福減免)

利用者負担軽減制度は、低所得の人が一部の介護サービスを利用する際に、その費用を軽減できる制度です。

この制度を利用できるのは、次の要件をすべて満たしており、生計が困難だと市町村が認めた場合です。

  1. 年間収入が単身世帯で150万円、世帯員が一人増えるごとに50万円を加算した額以下であること。
  2. 預貯金等の額が単身世帯で350万円、世帯員が一人増えるごとに100万円を加算した額以下であること。
  3. 日常生活に供する資産以外に活用できる資産がないこと。
  4. 負担能力のある親族等に扶養されていないこと。
  5. 介護保険料を滞納していないこと。

    引用:厚生労働省「社会福祉法人等による利用者負担軽減制度について

低所得者は、自己負担額の1/4、老齢福祉年金受給者は1/2が軽減されます。

この制度は助成費用の一部を介護サービス事業所が負担する仕組みのため、利用するためには、この制度に申請している施設かどうかを確認する必要があります。

生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度は、所得が少ない人や障害がある人の生活を経済的に支える制度です。

以下の世帯が、生活福祉資金の貸付の対象となります。

低所得世帯…資金の貸付けにあわせて必要な支援を受けることにより独立自活できると認められる世帯であって、必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯(市町村民税非課税程度)。
障害者世帯…身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者(現に障害者総合支援法によるサービスを利用している等これと同程度と認められる者を含みます。)の属する世帯。
高齢者世帯…65歳以上の高齢者の属する世帯(日常生活上療養または介護を要する高齢者等)。

引用:全国生活福祉協議会「福祉の資金(貸付制度)

連帯保証人をたてれば無利子でお金を借りられますが、連帯保証人がたてられない場合でも、年1.5%の低金利で利用できます。

生活福祉資金貸付制度の利用に関する相談や申し込みは、お住まいの市区町村社会福祉協議会で受け付けています。

参考:厚生労働省「生活福祉資金貸付条件等一覧

生活保護

生活保護は、就労が困難になり生活が困窮した場合に、最低限度の生活を補助してもらえる制度です。

現状、働ける状態ではなく、親族からの援助も受けられないような場合に、支給されます。土地や自宅がある場合は、売却しなければなりません。

また生活保護は、日常生活に必要な費用の扶助だけでなく、日常生活に必要な費用や介護サービスの費用の扶助も受けられます。

費用の負担が少ない特別養護老人ホームは、生活保護受給者にとって入りやすい施設といえるでしょう。

介護付き有料老人ホームは、入居費用が高額になる印象です。

しかし、中には生活保護受給者を対象とした料金プランを設定している施設もあるので、探してみると良いでしょう。

参考:厚生労働省「生活保護制度

自治体独自の助成

自治体独自に助成がある場合もありますので、まずはお住まいの自治体に問い合わせてみると良いでしょう。

窓口の名称は各自治体によって異なりますが、「保険年金課」や「介護福祉課」を探してみてください。

助成の内容はさまざまで、介護サービスの負担額を何割か負担してくれたり、施設入居後の居住費の一部を支給してくれたりします。

助成制度を利用する際には、通帳など保有資産のわかる書類や介護保険被保険者証、申請する本人のマイナンバーがわかる書類などが必要ですので、準備しておきましょう。

認知症の人を介護施設に入れるタイミング

認知症の人を介護施設に入れるタイミング

認知症の人を介護施設に入れるタイミングは、次の点から判断すると良いでしょう。

施設に入れるタイミング
  • 介護する人の状態から判断する
  • 介護される人の状態から判断する
  • 自宅での生活に支障があるか判断する

家族が認知症になっても、「なるべく施設には入れたくない」と考え、今までの生活を続ける人もいるでしょう。

しかし、認知症は完治する病気ではありません。

いずれ症状が悪化することを考えると、介護施設選びは「認知症」と判断された時点で早めに始めるのが賢明です。

認知症の人が入れる介護施設を探し、それぞれのメリットデメリットを考えるだけでも大変です。
認知症が悪化してから施設を選び始めるのは、介護する側にとって負担が大きくなります。

できるだけ、早いうちから施設のことや費用のことを考えておきましょう。

介護する人の状態から判断する

介護する人が、「介護に疲れた」「体力的にも精神的にもきつい」と感じ始めたら、認知症の人を介護施設に入れるタイミングです。

  • 目を離せないので、仕事に支障が出る
  • 睡眠が取れない
  • 体力の限界
  • 老老介護で介護しきれない

認知症の症状が進行すると、24時間の見守りが必要になります。
認知症の人を介護するのは長期戦です。

最初は家族で協力し合えたとしても、疲れが取れなくなったり、イライラが溜まってきたりし、周りの助けが必要となるでしょう。

介護する方の健康・精神状態に悪影響を及ぼすようになってきてしまったら、認知症のプロがいる介護施設を頼るのが、お互いのためです。

介護される人の状態から判断する

介護される人の状態からも、施設に入れるべきかどうかを判断できます。

  • 思考力の低下
  • トイレに介助が必要
  • お金の管理ができない
  • 危険だと感じる行動がある
  • ひとりにしておけない

介助なしになにもできない状態の認知症患者が、今までの生活を送るのには無理があります。

認知症の人が安全に暮らせる環境を整えることが、認知症の人にいつまでも元気でいてもらう秘訣です。

自宅での生活に支障があるか判断する

認知症の症状が悪化し、自宅で生活するのに支障が出てきたら、なるべく早く施設に入ってもらうことを検討するのが良いでしょう。

認知症が悪化すると、日常生活でなにをするかわからないため、片時も目が離せません。

少し目を離した隙に外に出ていってしまい、交通事故にあったり迷子になったりすることもあります。

家の中で火事を起こしかけたり、転倒が増えるような状況は、認知症の人だけでなく介護者にとっても安全に過ごせるとは言い難いでしょう。

専門的なケアを受けることで、症状の進行は緩やかになる可能性もあります。

施設に入れることを悲観的にとらえず、安全で心穏やかに過ごせることに目を向けましょう。

施設に入れる費用がない|対応策4選

施設に入れる費用がない|対応策4選

助成金や補助金を使っても、認知症の人を施設に入れるための十分な費用がない場合、次の4つの方法で対応することもできます。

施設にいれる費用がないときの対応策
  1. 金融機関の介護ローンを利用する
  2. 自宅を売却する
  3. リースバックを利用する
  4. リバースモーゲージを利用する

それぞれの方法にメリット・デメリットがあります。

ひとつずつ詳しく説明しますので、ご自身の状況にあった方法を選択してください。

①金融機関の介護ローンを利用する

金融機関の介護ローンを利用して、費用を工面する方法があります。

金融機関の介護ローンは、金融機関によってさまざまですが、10万円~500万円程度の資金を低金利で借りられます。

融資までが早いというのもメリットのひとつでしょう。

介護ローンは、取り扱っている金融機関があまり多くありません。
介護ローンの取り扱いがある金融機関をいくつかピックアップしました。

介護ローンは、介護に関する費用にしか使えず、医療費には使用できないことに注意が必要です。

②自宅を売却する

持ち家があるなら、売却することで資金を作ることもできます。

自宅を売却する場合のメリットは、一度にまとまったお金を手に入れられることと、固定資産税や都市計画税などの税負担を減らせることでしょう。

コンパクトで住みやすい家に住み替えれば、管理も簡単になります。

しかし、自宅を売却することにはデメリットも多いことに注意が必要です。

  • すぐに買い手がつくとは限らない
  • 売却価格が思ったより低かった
  • 引越しが必要
  • 新しい住まいを探す必要がある
  • 新しい自宅の家賃負担がある

自宅売却は、肉体的・精神的負担が大きくなりがちです。

介護の負担もあるので、売却を考える場合はなるべく早い段階で取り掛かる必要があります。

③リースバックを利用する

持ち家がある人で、「老後の資金は手に入れたいけれど、住み替えるのは面倒」と考える人には、リースバックがおすすめです。

リースバックは、自宅をリースバック会社に売却し、リースバック会社に毎月の家賃を支払いながら、今住んでいる自宅にそのまま住み続けることができるシステムです。

一括で大きな金額のお金を手にでき、引越しをせずにすむことは、大きなメリットとなるでしょう。

所有権はリースバック会社に移りますので、固定資産税や都市計画税を支払う必要もありません。

最終的にコンパクトな自宅に住み替えるにしても、時間的な余裕ができるため、心に余裕をもってじっくり検討できます。

リースバックについて詳しく知りたい人は、こちらをチェックしてみてください。

④リバースモーゲージを利用する

リバースモーゲージとは、主に土地を担保にしてお金を借り、死亡時に借りたお金を一括返済するローンのことです。

リバースモーゲージでは、借入れた金額を毎月返済する必要がありません。

代わりに、借りたお金は住宅の所有者が亡くなったり、住宅を売却したりしたときに、その住宅を売って返済することになります。

メリットが多そうに感じるリバースモーゲージですが、デメリットを知っておかないと「こんなはずではなかった」ということにもなりかねません。

リバースモーゲージのデメリットをいくつか挙げてみました。

  • 金利が上昇し、返済額増加のおそれ
  • 契約者が亡くなったあと、家族がその家に住めなくなる
  • 不動産評価額が下落することで、返済が発生するおそれ
  • 借入限度額が低くなる傾向

リバースモーゲージは利用条件が複雑で、将来の影響までよく考えてから契約する必要があります。

まとめ

認知症の人を施設に入れることを考えた場合、認知症の人が負担なく過ごせるような施設を見つけることが重要です。

そのためには、多くの費用が必要になる可能性もありますので、家族が「認知症」と診断された時点で、介護施設や費用について、早めに対処法を考えておくのが良いでしょう。

一度に多くの費用を準備するのは大変です。
なるべく負担がかからないよう、助成制度や介護ローンの利用などの活用も検討してみてください。

持ち家があるのであれば、自宅の売却・リースバック・リバースモーゲージも利用できます。

自宅の売却・リースバック・リバースモーゲージを検討する場合は、メリットとデメリットをしっかりと把握するようにしましょう。

リースバックの特徴をもっと詳しく知りたい人は、以下をチェックしてください

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