老人ホームの入居中に収入に変動があり費用が払えなくなったり、生活スタイルの変化により支払いが困難になってしまったりした場合、不安を感じてしまうでしょう。
結論から言いますと、即日に退去を求められるケースはほとんどありません。
猶予期間終了後に退去となる場合がほとんどです。
この記事では老人ホームの費用が停止されるとどの様な流れになるのかについて、老人ホーム費用が払えなくなりそうな場合の対策などを解説したいと思います。
老人ホームの費用が払えないとどうなる?
様々な理由で老人ホームの費用が急に払えなくなってしまうケースもあるでしょう。
ここでは、老人ホームの費用が払えなくなった場合にどのような流れで状況が変化していくのかについて解説していきます。
身元引受人に請求される
老人ホームの費用は原則として本人が支払いますが、本人が払えなくなってしまった場合は、入居契約時に定めた身元引受人・連帯保証人に請求されます。
身元引受人も支払いが難しい場合は、担当のケアマネジャーや施設の職員へ正直に相談しましょう。
別の施設の紹介など相談に乗って貰えます。
一定期間の猶予後に退所
多くの場合は3カ月~6カ月ほどの猶予期間が設けられており、猶予期間のなかで支払いを済ませれば引き続き施設で暮らすことができます。
しかし猶予期間のうちに支払いを終える事が出来なかった場合は、身元引受人に連絡が行き、強制的に退所となります。
一定期間の猶予期間でなにか対策ができるように、払うのが難しそうに感じた段階で速やかに第三者に相談するようにしましょう。
老人ホームの費用が払えない場合の対処法
老人ホームの費用を支払うのが困難なときは、金額面を重視して施設選びをする方法や、公的な制度で負担を軽減する方法があります。
一人で抱え込まず誰かに相談することで、自分では浮かなばなかった施策が浮かぶことがあるので、まずは誰かに相談することが大切です。
ケアマネジャーなど施設職員に相談
ケアマネジャーに相談をする事で、状況を踏まえて一緒に考えてくれます。
アドバイスを参考に施設長に支払い期日の延期や、分割にしてもらえるかなど、あらためて具体的に相談をしましょう。
料金が安い施設に転居する
継続して費用が支払えない可能性が高い場合には、猶予期間中に費用の支払いが可能な施設へと転居するようにしましょう。
施設によって金額は様々なので転居することで問題解決が出来るケースも多いです。
減免制度を利用する
各制度について正しい知識を身に着けることができれば、毎月の支払額を減らすことができます。
現状、施設の支払い費用に困っていない場合でも、キチンと減免制度について学んでおくと、いざというときに役に立ちます。
減免制度の種類
老人ホームの費用が払えなくなった場合、各種制度を利用して介護費用の還付や支援を受ける方法があります。
該当する制度がないか、いま一度確認してみてください。
また、制度の適用には時間がかかるケースがほとんどなので、出来るだけ早い段階で検討して行動に移すようにしましょう。
高額介護サービス費
介護保険の自己負担額には、上限が決められています。
しかし、上限を超えた分の金額は「高額介護サービス費」の対象となり、本人が負担せずに済みます。
上限額は世帯の所得によって異なりますが、一ヶ月ごとに支払った費用の総額に対して、所得に応じて15,000円(生活保護を受けている世帯)~140,100円(課税所得690万円の世帯)の上限負担額が設定されています。
一般的な所得の世帯であれば、月額44,000円以上の支払いをすれば払い戻しを受けられます。
所得が多いほど上限額が上がる仕組みとなっているので、分かりづらい場合はケアマネジャーや役所などで相談しましょう。
高額医療・高額介護合算療養費制度
1年間の医療費および介護費の自己負担額が高額となるケースでは、「高額医療・高額介護合算療養費制度」を利用できる可能性があります。
こちらの制度は、医療保険と介護保険を合算できるのが特徴です。
介護保険者と医療保険者へ申請すると、一部の自己負担額の払い戻しを受けられます。
対象者には申告書が送られてくるので、必要事項を記入して送り返すようにしましょう。
特定入所者介護サービス費
「特定入所者介護サービス費」は、介護施設へ入所する際の費用負担を軽減できる制度です。
原則として入居者の自己負担となる「居住費」や「食費」の負担を抑えられます。
制度を利用するには市区町村への申請が必要で、かつ対象となるには所得など一定の条件を満たす必要があります。
対象となる施設は下記です。
- 介護福祉施設サービス(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設サービス
- 介護療養型医療施設サービス
- 介護医療院サービス(介護予防)
- 短期入所生活介護(介護予防)
- 短期入所療養介護
- 地域密着型介護老人福祉施設サービス
また軽減される条件は下記となります。
- 本人と、同一世帯の人すべてが住民税非課税であること
- 本人と配偶者(別世帯も含む)住民税が課税世帯であること
- 所得の条件と預貯金合計額が基準以下であること
介護保険料の減免措置
失業や災害などによる被害にあって、介護保険料の支払いが困難な場合は、自治体へ「減免措置」を申し出る方法があります。
申請の手続きでは、収入の減少や罹災を証明する書類の提出が必須です。
申請後は審査が行われ、認められると介護保険料の一部が減免となります。
生活保護の需給
介護保険は、生活保護を受給している方でも利用できます。
生活保護で支給される扶助のうち、介護は「介護扶助」にあたります。
生活保護を受けると、必要に応じて介護保険サービスの自己負担分まで負担してもらえます。
介護扶助の申請は、地域を管轄する福祉事務所へ申し出ましょう。
医療費控除
医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、費用額に応じた金額を所得税から控除することができる制度です。
介護に限らず医療費全般の合算にて控除がされます。
また通院にかかった交通費や薬局での薬代も合算することが可能です。
自治体独自の助成制度
上記で紹介した以外にも自治体独自で減税制度を行っている場所もあります。
ほとんどの場合は、住民税非課税世帯や収入、資産に関する条件が設けられているので、市町村に確認をしてみましょう。
主に対象となる施設は下記です。
- 介護福祉施設サービス(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設サービス
- 介護療養型医療施設サービス
- 介護医療院サービス(介護予防)
- 短期入所生活介護(介護予防)
- 短期入所療養介護
- 地域密着型介護老人福祉施設サービス
費用が足りない時の対処法
転居先が無事に見つかっても、転居先の初期費用が不足しているケースや、転居しても月々の支払いに不安があるケースもあるでしょう。
対処法として3つの制度があるので、それぞれについて解説します。
「リバースモーゲージ」
「リバースモーゲージ」は、自宅を担保にして金融機関から融資を受ける高齢者向けの融資制度です。
自宅を売却せずに融資を受けることができ、家族はそのまま暮らせます。
ポイント |
借入出来る金額は自宅の担保価値で決まる毎月受け取るパターンと一括で受け取るパターンを選べる債務者が亡くなった場合担保にしている持ち家を売却すれば返済することができる |
「生活福祉資金(長期生活支援資金)」
土地や資産を保有しているが低所得である65歳以上の高齢者世帯を対象として、生活資金や医療費など、世帯の自立を支援するために貸付けを受けることができます。
また不動産を所有している場合は、長期生活支援資金を利用することも可能です。
借り入れには審査が必要で、二ヶ月程度かかります。
市区町村の社会福祉協議会などで早めに相談するようにしましょう。
「マイホーム借り上げ制度」
在宅介護の予定が無い場合、マイホームを賃貸にして家賃収入を得ることで老人ホームの費用に充てられる「マイホーム借り上げ制度」を検討してみるのも良いでしょう。
マイホーム借り上げ制度は、一般社団法人 移住・住み替え支援機構(JTI)が50歳以上の高齢者のマイホームを借り上げて転貸する制度です。
最初の入居者が決まった後、空室になった場合にも家賃を保証してくれます。
支払いが大変にならない為の施設選び
施設選びをする際には、無理せずに支払いのできるところを選びましょう。
手堅いサービスは魅力的ですがその分、費用も高くなってしまいます。
どのような施設であれば費用を抑えられるのか、以下で解説します。
都心から離れた施設を選ぶ
都心よりも地方、また駅から少し離れた場所にある施設の方が、地価が安いため家賃も安くなる傾向があります。
面会は不便にはなりますが、居住者さんは静かで暮らしやすいメリットも得られます。
また、家賃が安くなっても都心部の施設と同等のサービスが得られることもあります。
相部屋のある施設を選ぶ
相部屋だと利用料を安く抑えられます。
しかし、プライベートな時間を確保しにくくなったり、相部屋の相手と気が合わない場合ストレスになったりといったリスクがあります。
反対に、相部屋の相手と気が合えば施設の生活も楽しくなる可能性がありますので、一概に相部屋は悪いことだけではありません。
ですが、本人の意志が一番重要ですので、きちんと相談をしましょう。
できるだけ費用負担の少ない施設を探す
老人ホームの費用は施設によって様々です。
場合によっては老人ホームの種類を変えるだけで支払いの負担を減らせます。
以下で、民間機関の老人ホームと公的機関の老人ホームで費用の目安を見比べてみましょう。
民間機関の老人ホームの費用相場
種類 | 初期費用の相場 | 月額費用の相場 |
介護付き有料老人ホーム | 0円-100万円以上 | 15万円-30万円 |
住宅型有料老人ホーム | 0円-100万以上 | 15万円-30万円 |
グループホーム | 0円-100万以上 | 15万円-20万円 |
健康型有料老人ホーム | 0円-数億円 | 15万円-40万円 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 0円-数十万円 | 10万円-30万円 |
シニア向け分譲マンション | ~数億円 | 10万円-30万円 |
公的機関の老人ホームの費用相場
種類 | 初期費用の相場 | 月額費用の相場 |
特別養護老人ホーム | 0円 | 5万円-15万円 |
介護老人保健施設 | 0円 | 8万円-14万円 |
介護療養型施設 | 0円 | 9万円-17万円 |
軽費老人ホーム | 0円-数十万円 | 10万円-30万円 |
ケアハウス | 数十万円-数百万円 | 10万円-30万円 |
民間機関の老人ホームは公的機関の老人ホームと比べるととても割高です。
もちろん民間機関の老人ホームにはメリットもあるのですが、支払いが厳しい場合は公的老人ホームの選択をするようにしましょう。
毎月の支払いを抑える方法
初期費用の支払いプランを施設に相談をしたり家族が手伝えることを自分たちで行ったりすることで、毎月の費用を抑えられます。
長く住むことを考えると数年後には大きな差額になるため、入居する段階で考えておくようにしましょう。
洗濯や買い物は家族がする
洗濯ものや買い物代行などは、1回の費用はさほど高くはありません。
ですが、何度も利用すればその分の料金がかかり、一年間では10万円を超える金額になるケースもあります。
施設にもよりますが、買い物や洗濯ものを面会時に受け取って自宅でおこなえば、その分だけでも費用を抑えることができます。
入居一時金を一括で払う
初期費用0円という施設も増えていますが、実はその分月々の利用額が高くなっているケースもあります。
ですから、初期費用をしっかり支払ってても月々の支払いが安い施設を選んだ方が良いです。
初期費用と月々にかかる費用をしっかり計算した上で、施設を選びましょう。
まずは相談をしよう
老人ホームを利用する際には、しっかりとした事前準備や、継続した支払いが可能な施設選びを行いましょう。
しかし、万が一費用を払えなくなった場合は、手助けになる制度があります。
また助成などの制度は審査があり、期間を要することが多いので早めに調べて行動するようにしてください。
費用について不安がある時は一人で抱え込まず、市町村の窓口などで相談をしましょう。