マンションを購入する際に忘れてはならないのは、固定資産税の存在です。
この記事では、マンションの固定資産税の計算方法や目安について解説します。
固定資産税額は、マンションの購入価格や築年数、専有面積などの要素によって変動し、戸建て住宅と違い土地と建物それぞれにかかるという点を理解しておかなければなりません。
新築マンションの固定資産税に適用される軽減措置や税金の支払い方、滞納した場合のリスクについても説明しますので、マンションの固定資産税についての理解を深め、マンション購入後に慌てることのないように準備しておきましょう。
固定資産税とは
固定資産税は、土地や建物、償却資産に対して課される市区町村税の総称を言います。
ただし、東京都23区のみは例外で、東京都に固定資産税を支払います。
固定資産税として納税された税金は、日々の生活で利用する公共施設の整備や介護・福祉など、私たちの生活を支える財源として活用されます。
固定資産税の納税義務者
固定資産税の納税義務が発生するのは、毎年1月1日時点で固定資産を所有している人です。
たとえば、1月2日にマンションや土地を所有した場合は翌年に固定資産税が発生します。 (参考:総務省「固定資産税」)
固定資産 | 納税義務者 | 固定資産の所有者 |
土地 | 固定資産の所有者 | 原則、登記簿や土地補充課税台帳に所有者として登録されている者 |
家屋 | 原則、登記簿や家屋補充課税台帳に所有者として登録されている者 | |
減価償却 | 原則、償却資産台帳に所有者として登録されている者 |
固定資産税の支払い方法
固定資産税は、不動産の所在地を管轄している自治体から毎年4~6月頃に納税通知書が届きます。
納期は年4回で、一括納入も可能です。
支払いの手段としては、
- 現金
- クレジットカード
- 口座振替
- 電子マネー
- スマホ決済アプリ
など様々な選択肢があります。
金融機関や都税事務所の窓口やコンビニエンスストアでの支払いの他に、最近では納付書に印字されているQRコードを読み取ることで納付できるシステムもあります。
固定資産税・都市計画税の納期に関する詳しい情報を知りたい場合は、各市区町村のホームページなどで調べてみましょう。
固定資産税を滞納するとどうなる?
万が一、期限内に固定資産税を支払わなかった場合はどうなるのでしょうか。
事情がある場合はそれを申請することで猶予してもらえるケースもありますが、納付しないままにしておくと、様々なリスクが考えられます。
固定資産税を滞納した場合に起こりえるリスクについて説明していきます。
延滞金がかかる
期日が過ぎた場合、基本的に翌日から延滞金が発生します。
延滞金に関しては、滞納期間が長ければ長くなるほど高額になります。
ただし、延滞金がいつから発生するのかについては、各自治体によって異なるため、納付の遅れに気付いた場合はすぐに納付するようにしましょう。
財産差し押さえの危険性
納期限が過ぎてから20日以内に督促状が送付されます。督促状が送付されてから10日経過してしまうと、財産の差し押さえが可能となります。
土地や建物以外にブランド品や給料、預貯金も差し押さえの対象となるため、注意しなければなりません。
亡くなった場合は親族に請求される場合がある
固定資産税を滞納したまま亡くなると、相続人に支払いの義務が生じます。
また、相続人が決まっていなくても、戸籍を辿って対象者を探すケースもあります。
一般的な固定資産税の計算方法
マンションを購入すると、土地と建物を所有することになります。
そのため、土地や建物それぞれに固定資産税がかかり、 以下のように計算されます。
固定資産税=固定資産税課税標準額×税率(1.4%) |
税率の標準は「1.4%」ですが、自治体によって多少の違いがあるため、実際に計算する場合は調べておきましょう。(参考:総務省「固定資産税」)
固定資産税に係る「固定資産税評価額」とは
固定資産税評価額は、固定資産税の基準となる価格を指し、地方公共団体が税額を決定します(東京都23区は都が算出)。
すでに土地や建物を持っている場合は、固定資産税の納付通知書についている「課税明細書」に評価額が記載されているため、確認してみましょう。
「土地」と「建物」の2つの価格を評価し決定され、3年に1回、「評価替え」が行われます。
土地の固定資産税評価額
土地の固定資産税評価額の目安は、公示価格の「70%」程度です。ただし、土地の場所や面積、形状によって評価額が変わってきます。
建物の固定資産税評価額
建物の固定資産税評価額の目安は、再建築価格の「50~70%」です。 築年数が経っていればいるほど固定資産税評価額が下がる傾向にあります。
都市計画税がかかる場合もある
固定資産税は不動産を所有するすべての人に課せられる税ですが、市街化区域に所在する不動産を所有する人には「都市計画税」が課税されます。
都市計画税は固定資産税の課税標準額に、税率をかけて計算されます(上限は「0.3%」)。
マンションにかかる固定資産税はいくら?
これからマンションの購入を検討している方にとって気になるのは、マンションにかかる固定資産税ではないでしょうか。
マンションにかかる固定資産税の目安や新築マンションの固定資産税の軽減措置について詳しく解説します。
マンションの固定資産税は分譲のみ
おさえておかなければならないのは、マンションの固定資産税の支払義務者です。
賃貸マンションの固定資産税は賃貸人に納税義務はなく、不動産の所有者が負担するものです。
反対に、分譲マンションは部屋の所有者に固定資産税の支払義務が生じます。
マンションの固定資産税の目安
マンションの固定資産税の相場は以下の通りです。
- 新築マンション:10~30万円
- 中古マンション:10~20万円
上記のとおり、新築であっても中古であっても、大きく固定資産税は変わりません。
一戸建てよりもマンションの方が固定資産税は高い?
固定資産税の額は、一戸建てよりもマンションの方が高くなりがちです。その理由として、一般的に建物の耐用年数が一戸建てよりもマンションの方が長くなる点が挙げられます。
減価償却期間が長くなる傾向にあるため、一戸建てよりも固定資産評価額が高くなりやすいのです。
もちろん、マンションの場合は課税対象となる土地の面積が一戸建てよりも小さいため、必ずしも高くなるとは言えません。
新築マンションの軽減措置
新築マンションを購入する場合、一定の条件を満たしていれば税金の軽減措置が認められています。
- 土地への軽減措置
- 建物への軽減措置
- 認定長期優良住宅の軽減措置
これにより、固定資産税が安くなります。
土地への軽減措置
マンションの敷地となっている土地には固定資産税の軽減措置が用意されており、対象となる土地は固定資産税の課税評価額が1/3に減額されます。
そのうち、小規模住宅用地については課税評価額の1/6に減額されます。
土地が200平方メートル以下 | 固定資産評価額×1/6を課税標準額に軽減 |
土地が200平方メートル超 | 固定資産評価額×1/3を課税標準額に軽減 |
建物への軽減措置
マンションが築5年以内であれば、以下の条件を満たすことで、床面積120平方メートルまでの評価額が1/2に減額されます。
- 2024年3月31日までに建てられたもの
- 床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下
- 居住用部分が1/2以上・3階建て以上、耐火・準耐火構造
認定長期優良住宅の軽減措置
新築マンションのうち、 認定長期優良住宅である場合、新築から7年間は固定資産税が1/2に減額されます。
要件は以下の通りです。
- 床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下
- 長期優良住宅として認定通知書を取得すること
タワーマンションの固定資産税には例外的措置
大都市圏にある「タワーマンション」と呼ばれる高層階物件は、景観が良くなる高層階ほど購入価格が高くなる傾向にありますが、以前はマンション1棟にかかる評価額を部屋ごとの床面積で割って算出していることから、階層による固定資産税に金額差はありませんでした。
しかし、平成29年に税制改正が行われ、20階建て以上のタワーマンションの固定資産税については、高層階ほど高く、低層階ほど安く補正がかかるようになってしまいました。
マンションの固定資産税をシミュレーション
マンションの固定資産税について気を付けなければならないのは、築年数によって税額が変わる場合があるという点です。
ではここで、新築マンションを購入してから経年ごとのシミュレーションを見ていきましょう。
例として、東京都内にある新築マンションで、土地が「2000万円」建築物が「3000万円」の固定資産税評価額の場合の計算方法で考えます。
なお、減税借置などはマンションそれぞれの構造によっても異なるため、正確なマンションの固定資産税を算出する場合は不動産会社などに相談してみるのがおすすめです。
新築マンションの固定資産税
新築の場合、要件を満たすと軽減措置で5年間分の評価額が1/2になります。
また、土地に関しては土地が200平方メートル以下の物件であれば評価額が1/6になります。
この場合の計算方法は以下の通りです。
建物:3000万円×1/2×1.4%=21,000円土地:2000万円×1/6×1.4%=47,000円21,000+47,000=68,000円固定資産税は68,000円 |
土地が「2000万円」、建築物が「3000万円」の東京都の新築マンションの場合、目安となる固定資産税は「68,000円」となります。
築6年のマンションの固定資産税
築6年のマンションは、建物部分の軽減措置は終了しますが、年数が経っているのでそれに応じて再計算します。
東京都の定める「経年減価補正率表」では、6年後の経年減価補正率は「0.8335」と定められているため、固定資産税額の算出の仕方は以下の通りです。
建物:3,000万円×1.4%×0.8335=350,070円土地:2000万円×1/6×1.4%=47,000円350,070円+47,000円=397,070円固定資産税は397,070円 |
土地が「2000万円」建築物が「3000万円」の東京都の築6年マンションの場合、目安となる固定資産税は「397,070円」となります。
築15年のマンションの固定資産税
東京都の定める15年後の経年減価補正率は「0.6225」と定められています。
計算方法は以下の通りです。
建物:3,000万円×1.4%×0.6225=261,450円土地:2000万円×1/6×1.4%=47,000円261,450円+47,000円=308,450円固定資産税は308,450円 |
土地が「2000万円」建築物が「3000万円」の東京都の築15年マンションの場合、目安となる固定資産税は「308,450円」となります。
築25年のマンションの固定資産税
東京都の定める25年後の経年減価補正率は「0.3992」と定められています。
計算方法は以下の通りです。
建物:3,000万円×1.4%×0.3992=167,664土地:2000万円×1/6×1.4%=47,000円167,664+47,000=214,664円固定資産税は214,664円 |
土地が「2000万円」建築物が「3000万円」の東京都の築25年マンションの場合、目安となる固定資産税は「214,664円」となります。
マンション購入時は固定資産税の理解が大切
マンションにかかる固定資産税は築年数や土地や建物の割合などによっても大きく異なります。
そのため、マンションを購入する際には購入費用の他にも、継続的に支払わなければならない固定資産税についての知識を深めることも重要です。
固定資産税を滞納した場合、延滞金や財産差し押さえなど、様々なリスクが生じるので、いくらくらいかかるのか目安としてあらかじめ調べておくと良いでしょう。
今回紹介した固定資産税の計算方法や軽減措置などを詳しく理解し、マンション購入に役立ててください。