「事業が不調になり収入が突然下がった」
「トラブルに巻き込まれて支払い能力がなくなってしまった」
など、生きていると予期せぬ出来事が起こります。
その結果、住宅ローンが払えなくなってしまうケースに遭遇することがあります。
ただし、住宅ローンが支払えなくなってしまったとしても対応策が無い訳ではありません。
この記事では、支払いが滞ってしまう主な原因や、住宅ローンが支払えなくなった場合の行政処分の流れ、そして対処法についてご紹介いたします。
住宅ローンが払えない人の割合
住宅ローンを滞納している人は、全体の約1%と少ない割合です。
しかし、リーマンショックや新型コロナウイルスの影響などにより、経済的に深刻な状況になると、住宅ローンの延滞率が上昇する傾向にあります。
具体的なデータはありませんが、住宅ローンを払えなくなる人が一定数いるのは事実です。
住宅ローンが払えない理由
住宅ローンを契約した際にきちんと返済計画をたてていたとしても、返済が厳しくなることは誰にでも起こる可能性があります。
住宅ローンが払えなくなる理由は人によってさまざまですが、よくある理由についていくつかご紹介します。
世帯収入が減少した
住宅ローンの融資金額は、契約時の収入をベースにして、その先も安定的に収入を得られることや収入が上がることを前提に設定されています。
しかし、リストラによる突然の失業や転職、突然の病気や負傷による休職、離婚などの生活環境の変化、新型コロナウイルス感染拡大の影響などの予期せぬ出来事などで、支払いが苦しくなるケースもあります。
特に近年では、新型コロナウイルスや大規模な自然災害などの影響が大きいです。
予定よりも支出が増加した
将来を見据えて計画的に返済や貯蓄などを進めているつもりでいても
- 病気や怪我による治療費
- 高齢の親の介護費
- 会社の倒産
- 子供の学費
などで、予想していたよりも支出が増加して、住宅ローンの返済が困難になる場合もあります。
また、住宅ローンを変動金利で契約していた場合、利率が上がり返済額が増えてしまう場合もあります。
定年後まで住宅ローンが残っている
晩婚化によって自宅を購入する年齢も上昇している傾向にあり、定年後にも住宅ローンが残っているケースも少なくありません。
定年後の年金暮らしの中で老後の資金を考えつつ、住宅ローンも返済していくとなると生活の大きな負担になります。
また「退職金で一括返済を想定していたが退職金が予定よりも少なかった」、「年金暮らしの中で住宅ローン以外の固定資産税やマンションの管理費や修繕費といった固定費が苦しい」などの理由から、住宅ローンの返済が滞ってしまうこともあるようです。
最初から無理のあるローン計画だった
住宅ローンの負担率は年収に対しておよそ20%以内が理想といわれます。
年収倍率は8倍が借入可能額ですが、5倍が適正借入額です。
頭金を少額にして、限度額ギリギリに住宅ローンを組むなど、月々の返済額の負担が大きいローン計画にすると返済が厳しく、滞ってしまうことが多いです。
家計を圧迫せずに安定的に住宅ローンを返済していくためには、年収の20%以内に返済比率を抑えつつ、65歳までに完済できる計画をたてることが重要です。
上記のような返済計画であれば、無理のない借入が実現できるプランだといえます。
予期せぬ病気で障害を負った
ローンを契約する際に、収入に影響を大きく及ぼすような病気や怪我になることを想定している人はほとんどいないでしょう。
しかし、実際に予期せぬ病気や怪我により入院したり、家族の介護などで休職や離職を余儀なくされるなどの事態がおきたりすると、住宅ローンの返済計画が苦しくなります。
また、身体に障害が残る「高度障害」に該当する病気や怪我を負うなどして収入を得ることが難しくなった場合には、「団体信用生命保険」で補償を受けられる可能性があるため、保険の契約内容を確認してみましょう。
住宅ローンが払えなくなると強制売却
住宅ローンを支払うことができずに滞納し続けていると、最終的には競売で売られてしまうことになります。
滞納したら、即競売にかけられるというわけではありませんが、1年ほどで退去命令となってしまいます。
住宅ローン滞納で督促状が届く
住宅ローンを1〜2か月滞納してしまうと、借入をしている銀行や金融公庫などの金融機関から「未納金と延滞損害金をお支払いください」という内容の督促状が届くようになります。
一時的にローンの返済が遅れてしまったときは、できるだけ早く返済すれば問題なく済むこともありますが注意が必要です。
3ヶ月滞納で一括返済を求められる
督促状や催告書を無視して3ヶ月以上の滞納が続くと、期限の利益を喪失し、一括返済が求められるようになります。
「期限の利益」とは「住宅ローンを分割で支払うことができる」というメリットのことです。
概ね3ヶ月以上住宅ローンを滞納すると、個人信用情報機関に金融事故情報が記録されます。
半年滞納で裁判所から競売開始決定通知
半年ほど住宅ローンを滞納すると、裁判所から競売開始決定通知が届きます。
「競売開始決定通知」とは、不動産を担保としておさえ、競売の手続きが開始したという通知のことです。
保証会社によって代位弁済されると、「代位弁済通知書」が届きます。
競売の手続きが開始されると、裁判所の執行官と不動産鑑定士が自宅を訪れ、写真撮影や間取りの確認、環境の調査などの「現況調査」を行います。
競売を取り下げる場合は、任意売却と呼ばれる競売以外の方法で売却して一括返済を行います。
競売を回避するための任意売却
任意売却とは、競売以外の売却手段で、住宅ローンを借りている金融機関の合意を得てローン残債のある家を売る方法です。
通常は、住宅ローンを完済していなければ不動産を売却できませんが、金融機関の同意のもと、住宅ローンを完済できない家の抵当権を解除して売却が可能となります。
任意売却には競売よりも高値で売却できる可能性があるメリットがあります。
8~9ヶ月滞納で競売がスタート
保証会社によって代位弁済されていた場合には、代位弁済した保証会社が裁判所に競売を申し立て、競売開始決定が出ると「差押え通知書」が送られてきます。
次に、裁判所から「競売開始決定通知書」が届くので、それによって競売が始まることとなります。
1年~1年半滞納で退去命令
滞納開始から1年〜1年半で競売が実施されて、家が落札されていくことになります。
落札された後は、新たな落札者との間で立ち退き交渉が行われ、立ち退きをしなくてはなりません。
もしも、立ち退きしないと強制執行されることとなり、執行官によって強引に荷物が運び出され、追い出されてしまいます。
住宅ローンが払えない時の対処法
住宅ローンが払えなくなったら、何もしないまま時が過ぎていくことは避けて、早めに対策を考えるべきです。
返済ができなくなった時の対処法には、いくつかの選択肢があります。
自分が利用可能な方法はどれなのか、比較して最善の方法を選択していきましょう。
住宅ローンの返済計画の見直し
返済期間や月々の返済額など返済条件の見直しを債権者である金融機関に相談することで、返済計画の変更や月々の返済額の減額などの対応をしてもらえる場合があります。
あわせて、家計の中に「ムダな出費がないか」「削れるものはないか」など、今一度収入と支出の見直しをチェックしましょう。
保険適用の確認をする
住宅ローンを組んだ際に加入している団体信用生命保険(団信)や民間の保険で適用できるものがないか、保障内容や定款を確認してみましょう。
団体信用生命保険(団信)とは、死亡以外にも高度障害・身体障害に認定された場合も保険の適用対象です。
保障される病気の種類や保障額については金融機関によって異なりますが、利用できるものがあるかどうか、民間の保険に加入していたら内容を確認してください。
保険の種類 | 内容 |
収入保障保険 | 保険者が亡くなった場合に遺族が収入保被障年金を受け取る死亡リスクに備える保険 |
就業不能保険 | 病気や怪我によって収入が減少してしまうリスクに備える保険 |
債務返済支援保険 | 病気や怪我で収入が減少してしまったときの住宅ローン返済リスクに備える保険 |
住宅ローンの借り換えを検討する
現在の住宅ローンでは金利が高い場合には、金利の低い金融機関へ借り換えを行う方法もあります。
借り換えを行うためには費用がかかりますが、借入金額や金利差が大きければ、借り換えにかかる費用もカバーできるかもしれません。
下記のような条件に該当する場合は、借り換えも検討してみてください。
- 金利が住宅ローンを組んだ当初よりも1%以上低くなっている
- 返済期間が10年以上残っている
- ローン残高が1,000万円以上残っている
自宅を売却する
上記で案内した方法が利用できそうにない場合、自宅を売却するのも一つの手です。
家を売却する上で重要な点は、信用情報機関が情報共有している「事故情報名簿に載る前に売却してしまう」ことです。
また、家を売却するときには、住宅ローンを全額返済し、金融機関の設定した抵当権を抹消してもらう必要があります。
ローン残高が少ない場合は、家を売却することで返済できる可能性もありますが、残った住宅ローンを自己資金で返済できない場合は、任意売却を検討しましょう。
リースバックを利用する
リースバックとは自宅を売却して現金化させ、それと同時に賃貸契約を交わすことで、家賃を支払いながら同じ家に住み続ける方法です。
引っ越しをせずにすむので、生活環境を変えずにいられる点とご近所に知られずに売却できるといったメリットがあります。
リバースモーゲージを利用する
リバースモーゲージとは、自宅に住みながら、その家を担保にして老後の資金を借りることができるシニア向けのサービスです。
リバースモーゲージで借入をすると、毎月の生活費の融資、もしくは一括で融資を受け、借入期間中は毎月、利子だけを支払っていきます
住宅ローンが払えない時の注意
住宅ローンが払えなくなると、精神的に追い詰められてしまうこともあるでしょう。
しかし、どんなに精神的に追い込まれたとしても、絶対にやってはいけない注意点がありますので、覚えておきましょう。
新たな借り入れはしない
住宅ローンの返済が滞っている状態であるにも関わらず、キャッシングやカードローンで借り入れたお金で住宅ローンの支払いをしようとするのは危険です。
キャッシングやカードローンは、住宅ローンの金利に比べるととても金利が高いので、さらに返済が苦しくなってしまいます。
また、キャッシングやカードローンの履歴は住宅ローンの借り換え審査に影響するといわれていますので、安易に利用しない方が賢明です。
夜逃げしない
「いっそのこと夜逃げしたい」という考えが浮かぶ方もいるかもしれません。
しかし、当たり前の話ではありますが、夜逃げしたとしても返済義務から逃げられる訳ではありません。
住宅ローンの支払いができないからといって、夜逃げをしたとしても自宅は競売にかけられます。
借金が減るわけでもありませんので、任意売却や自己破産といった残債の圧縮や免責が可能な方法を検討しましょう。
きちんとした手続きを経て「個人再生」や「自己破産」といった借金の返済額を減らすことができる措置を視野に入れつつ、専門家に相談することをおすすめします。
住宅ローンが払えない時は早めに対策を
住宅ローンが支払えなくなる状況はとても苦しいでしょう。
しかし、住宅ローンを払えなくなったとしても、何もせずに放置するのは絶対に避けましょう。
「返済が苦しい」と感じた段階で、早期に金融機関に相談することで新たな対策が見つかります。
自己破産なども選択肢に入ると思いますが、「終わり」ではなく「再生するためのセーフティーネット」ですので、判断を誤らずに最良の選択をしてもらえればと思います。